2022年11月03日 高畠町ツーリング

ツーリング

当初計画では福島県の檜原湖あたりまで行ってキャンプしようと思っていたんだけど、朝晩の冷え込みが一層強くなってきたので断念。
いまなおゴールデンウイークの極寒キャンプは、トラウマになっているようで。

ならば、通り道として考えていた高畠町を目的地に変更。
出発も10時前後のユルいスタート。

目的地の高畠町は、山形県の南寄りに位置しており、米沢市を挟んで福島県に接する。
宮城県から行く場合は、山形県に抜けた後、南北に連なる国道13号線で南下するか、白石市から国道113号線を通って七ヶ宿の峠道を超える方法か、あるいは最近開通した東北中央自動車道を使うか。

仙台市内もしくは周辺に住むバイク乗りだったら、宮城県の山間部を変則的に連なる国道457号線を走って七ヶ宿町に抜ける方法が面白いかもしれない。

いずれにせよ、スロースターターだったんで、今回は国道4号線を使い、最短ルートで白石まで南下。
好天に恵まれた祝日だけあって、4号線は混雑気味。
113号線に入って七ヶ宿ダムまで2時間もかかった。

ダム周辺の森は紅葉が始まっており、それでいて寒さは感じられず。
やっぱりキャンプに出掛ければよかっただろうか?
113号線の峠道には、たくさんのバイクが行き交っていた。
みなさん、安全運転で。

高畠町に抜けた頃には13時を回っていた。
遅めの昼飯、何処にしようか。
この辺りに来たからには「米沢牛」?

否。
ここまで来たからには鯉(コイ)でしょう。
実は米沢や高畠では、古くから鯉の養殖が盛んで、実は我が一族の先祖というか本家も高畠町。
本家宅の近くにある鈴沼でも、随分昔から鯉養殖がおこなわれていた。
リンゴが食べごろの時期になると、一族総出で本家を訪れ、たくさんのリンゴと共に鯉料理を振る舞われるのが習わしだった。
祖父も父親もそのきょうだいも亡くなったため、訪れる機会もすっかり失われてしまったが。

昔の味を懐かしんでばかりじゃ意味がない。
いま、この世に生きている人間が食べてこその伝統なり習わしでしょう。
といっても、わざわざ外食で食べたことはなくて、養殖業者が調理して店先で売っている真空パックを買う程度。
どこで食べたら良いものやら…

こういう時、役に立つのがgoogle mapね。
最近はSEOよりも、MEO(Map Engine Optimization)最適化の方が主流らしくて、マップで検索して見つけることの方が多い。
ヒットしたのが、米沢市の「鯉の六十里」というレストラン。
というより、この辺りでヒットしたのが、この1軒だけ!
ランチの営業時間は14:00まで。
ナビの計算では13:30着…!
ぶっ飛ばしたいところだけど、ここで事故ったら元も子もない。
警察車両に遭遇してもビビることない速度で走ること1時間ほど。
予定時刻を20分ほど切り詰めたのは、そりゃあ経験の差というヤツです。

着いてみてビックリ。
老舗料亭の佇まい。
敷地内には、鯉が悠々と泳げる広い池も。
普段、ラーメン屋だのサービスエリアばかりで食べている貧乏ライダーには敷居がメチャクチャ高そうな店じゃないですか??
「やべえな、こんなところで食ったら破産するんじゃないの?」
思わず引き返そうとしたけど、そんな弱腰じゃご先祖様に申し訳ない(笑)。
一族を代表して、堂々と暖簾をくぐる。
二階に通されて「こちらへどうぞ」と案内されたのは、個室…!
ヨレヨレの革ジャンと色あせたジーパンで入るのが、ほんと申し訳ない(笑)。
さらには、仲居さんが「本日はいらっしゃいませ」とご挨拶してくれて、恐縮しまくり。

メニューを開くと「おお、やっぱりな」というような価格設定。
貧乏臭をかぎ取ったのか、仲居さんが「単品メニューもございますので…」と言ってくれたが、ちゃんとランチメニューも充実している。
「これが美味そう!」と選んだのが「鯉の甘煮定食」。
アタクシの下手くそ写真のせいで印象が悪くなったら大変なので、お店のサイトから拝借したのがコレです。

まず、やってきたのが、こちら。

生で食べる鯉です。
よく「鯉は臭くて食べられない」という方もいますけど、マジで臭くありません。
鯉に限らず食材に関して「臭くて食べられない」という感想を持った人の大半は、ダメな材料でダメな料理人がダメな調理法でつくったものを食べているから。
たとえば、普段何気なく食べている畜肉だって、処理の方法が悪かったらとてつもなくまずくて臭くて食べられたものじゃない。

自分も鯉を食べてきた、というけど、洗いをはじめ生食はあまり食べたことはない。
大丈夫かな、と少し身構えたけど、ひとくち食べて不安は消えました。
それどころか、淡泊なのに味がしっかりしていて美味い。
素材よし、腕もよし、なんでしょうね。

写真ダメすぎて申し訳ないですけど、手前のが菊の酢の物。
後ろは、鯉の骨や皮を調理したもの。
おもしろいのが、真ん中の「鯉の卵のゼリー寄せ」的な料理。
いろいろな味付けで楽しませてくれます。

これがメインの「甘煮」。
内臓もウロコも、余すことなく食べられる。
圧力鍋で骨まで食べられるようになっているのもあるけど、食感や味の具合はこちらの方が好きかも。

味噌汁も上品な感じでしょう?

最後の最後、パンナコッタと抹茶がついてくる!!
このクオリティとボリュームで2000円だから驚き。
ホスピタリティを考慮したら3500円くらいの価値はあります!
米沢周辺を走るなら、ぜひ立ち寄ってみて欲しい。

普段なら、ささっと食べてエンジンが冷えないうちにまた走り出すのだが、ここではゆったりと1時間くらいかけて食事。
こういうのも、たまにはいいじゃない?

腹が膨れた後は、アホが治るようにと日本三大文殊のひとつ、亀岡文殊へ。
亀岡文殊は正式には「大聖寺」といって真言宗智山派(弘法大師空海が始祖)のお寺。
文殊菩薩を祀っているため、昔から受験生に人気のお寺でもある。

お堂の裏には「知恵の水」があって…

ひと口飲めば、文殊さまの知恵が授かるのだそうだ。
G20もCOP21も、ここでこの水を飲みながら開催したら、少しは地球も人類もマトモになるんじゃないだろか?
昔は、ここで売っている団子だの玉こんにゃくを食べたりしたものだけど、今日は腹がいっぱいなのでやめておきましょう。

そこそこ急な階段なので、ブーツでガツガツ歩くライダーは足元注意。
次に向かったのが亀岡文殊からバイクで5分ほどの場所にある「犬の宮」「猫の宮」。
その名の通り、犬と猫を祀る神社。
まずは犬の宮から。
神社といっても、大きな祠(ほこら)が建てられているだけで、宮司さんが常駐するような大きなものではない。
でも、あちこちから愛犬(おそらく既にこの世にいない)の写真や思い出の品々が送られて、供養してもらおうとしているのだろうけど、その場合はお寺じゃないの?と思うんだけど…

我が家の犬も7月に亡くなったばかり。
本当にここからあの世にいる我が家の犬に声が届くなら、と思いをはせる。

由来を読むと、なかなかすごい。
写真の文字が読みにくいかもしれないので解説すると、こういうことらしい。

昔、この辺りでは役人から年貢として「人を差し出せ」と言われており、村人たちはひどく困っていた。
そこに旅の座頭(目の不自由な人たちで、有名なのが座頭市とか琵琶法師)が現れて、それはおそらく魔物の仕業だといって「役人たちを宴に招いて、そこに犬を放ちなさい」という。
言われた通りにすると、犬は役人たちに襲い掛かり、大乱闘となる。
役人は人間ではなく、タヌキの妖怪が化けたものだった。
妖怪は倒されたが、犬も死んでしまい、村人たちは犬たちを手厚く葬って神様として祀ったところ、この村は栄えた、というのが由来である。

一方の猫の宮。
これは、犬の宮とほとんど同じ敷地内にあるが、里山の中にある犬の宮と違って猫の宮は解放感がある場所に祭られている。
ここを訪れる数日前から、我が家の猫が通院したため「健康でありますように、病気が治りますように」とお祈り。
ところで猫の宮には、どんな由来があるんだろうか。

これもまた写真の文字が見えないかもしれないので解説すると、タヌキ妖怪が倒されてからおよそ70年後、子供のいない庄屋夫婦がいて、何故か「丈夫な猫が欲しい」と神様に祈っていた。
すると夢枕に観音様が現れて「お前らに猫をやるから、大事に育てなさい。そうすれば、村は安泰、そのうえ養蚕が盛んになるだろう」と告げる。
神託どおり、猫が現れて、夫婦は愛情をもって育てた。
何処へ行くにもついてくるカワイイ猫だったのだが、いつもガンを飛ばして歩くものだから、主は不気味がって、どういうわけか隠し持っていた刃物で猫をぶった切ってしまうサイコパス。
すると猫の首は平将門の首のように舞い上がり、天井裏に潜む大蛇に咬みついたうえ、殺してしまう。

実は大蛇は70年前、この地で悪さをしたタヌキ妖怪の怨念が蛇となって現れたもので、猫は観音様の化身だったという。
村人たちは猫を手厚く葬ったところ、村は観音様のお告げ通り養蚕が栄えて、人々も平和に暮らしたという。

そんなことがあったのか、この辺りには。
ていうか、村人たちは、アタシの先祖じゃないの?
年貢だからといって簡単に人を差し出したり、態度がおかしいからといって大事に育てた猫をいきなり切りつけたり…文殊さまの知恵の水、飲んでないの?

ちょこっとモヤモヤした気持ちを抱えたまま、そろそろ暗くなってきたので帰路に。
それにしても、この時期、日が落ちるとホントに寒いね。
関東や関西の人たちは夜になってからも、あちこち走るんだろうけど東北は無理…
19時前には帰宅したけど、ホントに寒かった…
こんなツーリングも今年は最後かな。

出発時。

帰宅時。

■おまけ■
高畠町内にも美味しい鯉を養殖、調理した製品を売っている店もあります。
昔はここからもちょくちょく購入していたけど、今回は立ち寄れなかった。
一応、情報載せておきます。

石川鯉店
〒992-0351 山形県東置賜郡高畠町高畠1022