Finland編

オーストラリアバイク一周

■1997年 7月30日  Helsinki

パースを出発してから何時間経ったのだろうか。
現在8:20。
場所はロンドン、ヒースロー空港。
到着していた頃に降っていた雨は止み、青空が見える。
早くも時差ボケが。
出発地のパースは現在15:20。
ヒースローまで直行だったらよかったのだが、シンガポールでのトランジットがあったので、中途半端にしか眠っていないのだ。
とにかく、やることもないので、ひたすら出発を待つ。

10:00、ようやくチビッコいジェット機(757)に乗り換え、一気にヘルシンキへ。
やってきたよ、ヘルシンキ。
フィンランドはオレにとって特別な国である。
小学生の頃から「ぜってえに行ってやる!」と心に誓っていたほどだ。
ひたすら感無量である。

何故オレがここまで感激するのかというと、ここはTVアニメでお馴染みの『ムーミン』が生まれた国。
ムーミンの原作はトーベ・ヤンソンという女性作家によって書かれた童話…
いや、小説である。

オレが人生最初にノックダウンを受けた作品は、ムーミンの原作だったのだ。
日本でも「ねえムーミン♪」の主題歌でお馴染みのアニメだが、原作とは全く別物だ。

オレから言わせれば、あれはムーミンであってムーミンではない。
ガンダムとGガンダムくらい違う…といえば分かるか?
分からないよね(笑)。

確かに子供むけの作品ではある。
難しい言い回しもないし、翻訳も非常に読みやすい。
小学校中学年くらいなら、理解できるはず。

ところが、どんどん作品を読んでいくと、どこか荒涼とした雰囲気に包まれていることに気づく。童話ならではのポジティブさが非常に少ない。
良いことをした者にはよい報いを。
悪いことをした者には悪い報いを。
という因果応報もムーミンには通用しない。

何の脈絡もなく、不幸に見舞われた登場人物がいて(時には死ぬことすらある)、彼らは動揺することなく「しかたないことだ」と、それを受入れる。
今にも死にそうな者たちを見ても「全ては助けられない」と素通りする場面もある。
幼いオレには、ものすごく強烈だった。 
子供ながら「子供向けの話なのだろうか?」と首をかしげることもあった。
 
という具合に、ムーミンを語らせたら、テキストだけで2GBくらいはあっという間に費やす。
ここではやめておこう。

空港からバスに乗ってヘルシンキの駅へ到着。
この時、オレの胸はひたすらムーミン。
とにかくムーミン。
もしかしたら「ムーミン、ムーミン」と呟いていたかもしれない。

とりあえず、駅構内にある観光案内所でユースホステルの予約を入れる。
さすが観光案内所だけあって、英語が通じたのがありがたい。
なにしろ、公用語は「フィンランド語」だ。
文字を見ても、アルファベット+馴染みのない点々がついた文字が並んで、どう発音していいかも分からないし、聞いても分からない。

ヨーロッパは夏が観光シーズンなので、宿はとりづらいらしい。
事実、安ホテルはどこも満室だった。

それにしても、ヘルシンキの街歩きは大変だった。
オーストラリアと同じく、通りにひとつひとつ名前がついているんだけど、読み慣れないもんだからいちいち立ち止まっては地図とにらめっこ。
おまけに、現地の言葉はフィンランド語なので、コミュニケーションもひと苦労である。

日本人よりはみんな英語しゃべれるみたいだが、そこらへんのオバチャンやオッサンは何やらテープを逆回転させたような言葉で喋りかけてくる。
「あいべっぐゆあぱーどぅん?」どころの騒ぎではない。
もう、根本的に何を言ってるのか分からないのだ。
ここまでくると、逆に開き直って日本語で会話。
気持ちを込めて喋れば何とかなる…場合もある。
 
それでも何とかユースを発見。
普段は学生寮として使われているらしく、夏休み期間中は開放してくれているらしい。

ところで白夜ってのはホントである。
8時を回っているのに、ムチャクチャ明るい。
夕方の感覚で街を練り歩いたら、店はどこも閉まっており、あらためて「これが白夜か」と驚く。
真っ昼間ってほど明るくはないが、それでも朝方くらいはある。
時差ボケとあいまって、よく眠れなかった。

■1997年 7月31日  Helsinki

翌日、早起きしてあちこち歩いてみる。さすがはヨーロッパ、建物に歴史あり。
石畳もレンガ造りの壁も、教会もみんな古いものばかり。
そんな中でも興味深かったのが、毎日行われているという港のマーケット。
普段家庭で食べるような食料品からお土産物まで、幅広い品ぞろえが魅力(ガイドブック的表現だ…)。



さっそく市場で木苺を買ってみる。
ムーミンの中で木苺は定番のアイテムなのだ。
ところが、期待していたほどの味ではなかった。
やや、甘さに強みが無いというか…鮮烈さがない気がした。
暑さで生暖かくなっていたせいか、それともジャムやジュースに加工しなければいけないのか。
ちょいとガッカリ。

そして、北欧は涼しげなイメージがあったのだが、暑い。
普通に暑い。
 
しばらくご無沙汰している、日本の夏と何ら変わりない。
日なたを少し歩くだけで、汗が噴き出してくる。
普段ケチケチした食生活を送っているせいか、いつもバイクで移動しているせいか、すぐにグロッキー。
最初は元気に踏み鳴らしていた踵も、次第に引きずりがちになる。

ここでの一番の発見は郵便博物館。
ここでは『ムーミンからの手紙(季節限定)』が売っており、何とムーミン谷から暑中見舞いが届くのだ!
まさに、ファンなら涙、涙のシロモノ。
早速購入して、自分宛に出す(笑)。
早くもムーミンフリークとしての目でしかモノを見れなくなっている。

夜は、近くで見つけた日本料理店で刺身定食を食べてみる。
サーモンとしめ鯖が出たのだが、こいつが美味い!
ドミトリーで宿代を浮かせておいて正解だった。
日本料理はどこの国もそれなりに高いのである。
残念ながら、写真はない(涙)。

■1997年 8月 1日 Naantali

ドミトリーの連中が目を覚ます前にベッドを這い出す。
着の身着のままで眠ったので、準備は早い。
ヘルシンキを出て、ムーミンワールドのあるナーンタレ(正しくはナーンタリ)という街へ行くことにする。

行き方は分からないので、駅で「ナーンタレ、ナーンタレ」と連呼。
そしたら英語で「トゥルクまで急行で行って、そこからバスに乗れ」とのこと。
簡単に言ってくれるが、フィンランド語なんて見ても分からない。

今度は「トゥルク」を連発して聞きまわる。ようやく、急行っていうか、新幹線みたいな立派な車両で行くことが分かった。
急行は2時間後に到着。
バス停を探してそこから30分後、ようやくナーンタレまでやってきた。

それにしても、荷物が重い。
何故か持ってきた革ジャンの重みのせいだ。

そりゃそうだ。革ジャンなしの重さだって10㎏を越してたんだから。
くそーNYでラングリッツの革ジャン買うぜ!
つーか売ってるのかどうかも分からないけど(笑)。

んで、ムーミンワールド。
小さな島につくられたこのテーマパークは、ムーミンオタクには感激モノだ。
実寸大のムーミン屋敷、水浴び小屋、竜のエドワードの模型、海のオーケストラ号…全てがそのまま。
ムーミン屋敷には、ちゃんと地下室も再現されているし。

知らない人には、何を言ってるのか分かりませんね。
スンマセン。
もはや読み飛ばして下さい。

よけいなアトラクションなんてなくて、入場客は自分の思うように中をブラブラできる。
押し付けがましいところがなくて、すんごい気に入った。
日本企業も協賛しているらしく、パンフレットには日本語版もあり。

そりゃそうだ。
ムーミンがここまで浸透していて、かつ人気がある国は日本くらいでしょ。
アニメシリーズだって、原作に忠実なバージョンも作られたし。
ちなみに映画版「ムーミン谷のすい星」は秀逸である。

ひとつ残念なのが、ムーミンワールドにキャンプ場がないこと。
もし、ここにテントサイトのひとつでもあったら、スナフキン気分で野宿したのだが。

今夜の宿は、小さなB&B。
Bed and Breakfast だ。
民宿みたいなものだろうか。ベッド(寝室)と朝食を用意してくれる。

お値段は300マルク(約7500円)とかなり高い。
オーストラリのキャンプ生活なら、一ヶ月くらいは泊まれる金額だ。

トンガリ屋根の外観、赤いチェックのブランケットカバーとふかふかの枕。
ベッドの脇の小さなテーブルに置かれた水差しと洗面器。
メルヘンでしょ?

オレにはちっとも似合わないでしょう?
ええ、似合いませんとも。
こんなところにカップルで来たら楽しいんだろうねえ。
こういう時、独り旅じゃなけりゃあなァとつくづく思う。
ロマンもクソもありゃしない。

■1997年 8月 2日 Tampere

昨日の続き。
ここは、もう全てがメルヘン(オレにとっては)。
朝メシ…いや、お食事は、食堂でパン、ミルク、ヨーグルトなんかが食べ放題。
食器もすごく美しい。
センスがいいんだろうね。
ここは、おばさんがひとりで切り盛りしてるんだけど、またいい人なのよ。

宿泊客のフィンランド親子とミカ・ハッキネンについてお喋りした後、タンペレという街に移動。

おばさんのオススメもあって、鈍行バスに乗る。
何とかという街で乗り換えて(これがまた恐怖。とんでもないところに着いたらどうすんだ)、駅の近くで降りる。
それにしても、フィンランド人は英語喋ってくれない。

観光案内所でユースホステル風のホテルを予約してもらって、宿へ。
1泊155マルク…ちょっと高いね。
メシは例によってマック。
ここのビッグマックミールは29・9マルク。オーストラリアより高い。
夜中の1時頃に目が覚めて外見たら、まだ明るい。
白夜ってのは、ここまで明るいのかと感心するより呆れた。

■1997年 8月 3日 Tampere

昨夜午前1時頃に起きたら、まだ空が明るかった。
夜に目が覚めたおかげで、寝不足になる。いい加減沈めよ、太陽!
昼前に起きて、ムーミン谷(ムーミン博物館)へ。https://www.muumimuseo.fi/ja/
 
そこには超レアなアイテム、原作者トーベ・ヤンソンの原画などが展示されている。
中でもミニチュアのムーミン屋敷は、実際ヤンソンが製作にたずさわったというもので、とても精巧に造られていた。
それを見たら、タンペレはどうでもよくなっちゃって、適当にブラブラして終了。
オタクにはこれで満足なのである。

■1997年 8月 4日 Tampere

タンペレは雨。くすんだ景色が、これまた綺麗。
ボンヤリと霧がかかる森や湖を見ていると、ムーミンの挿絵そのものだ。
昼頃にヘルシンキに戻る。
こっちはムチャクチャ天気がよくて、しかも暑い。

ホントならファームステイなんかも体験したかったんだが、時間的な都合もあって断念。
事前に準備できていればよかったんだろうけど…
でも、ムーミンのルーツを探るという今回の旅行は満足のゆくものだった。
 

■1997年 8月5日 Helsinki

見たいところというか、見れそうなところは概ね回ったので、街をブラブラするだけ。
明日の早朝が出発なので、宿には泊らず空港で野宿。
フィンランド、もう少し長居すればよかっただろうか。
もう一度訪れたい国のひとつとなった。
今度は、もう少し腰を据えて滞在したいものである。

三脚がないから何かの上に置いてリモコンで撮影。下が映ってます…自撮りのハシリだね

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