昔からSFが好きなのですが、この20年近く、満足のいく作品に出会えない理由が、この本を読んで(まだ少しですが)氷解した気がしました。
なんぼ近未来、未来の話を描いても、作者や作り手の視点、思考が「今の我々」なので、まるで未来感がないのです。
たとえば、我々日本人に馴染み深いガンダム。
人類は宇宙に住み、巨大ロボットが戦争の道具になって、とてつもないテクノロジーに溢れる世界に暮らす人々の生きざまは70年代~80年代に生きる人々そのもの。
技術が進歩したって、我々はそう変わらないよ、と笑うのは大きな間違いである。
現にガンダムの作者、富野監督さえ80年代の終わりに「数々のSF作品があるが、そのなかでゴミ問題に触れたものがあっただろうか」と述懐していた。
たかだかインターネットが普及して20年、我々の生活がこのように変化することを予言したSFがあっただろうか。
確かに、マトリックスなどサイバー空間、バーチャルリアリティーに軸を置いた作品はあれど、人々の思考は現代人のまま。
ネットがライフスタイルを大きく変えたところから、さらに発展したら、果たしてあの世界になるかというと疑わしい。
もしかしたら、一周まわって、また今の我々のような人々になったのかもしれないが、いま、我々が明治時代の人々と同じ感覚で暮らせるか、というとかなり怪しい(むしろ無理)。
いまのSFがつまらない、と嘆くSF好きにはオススメの一冊。
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