テンション高く浮かれた「ハレ」の週末が過ぎようとする頃から、日常を取り戻す週明けにかけて、「オートバイ死亡事故」のネットニュースが目に飛び込んでくる。
きちんと統計を取ったわけではないけど、警視庁(東京都)の統計によれば、自動二輪運転時の死亡事故の主な原因は「単独事故」と「右折時の事故」。
単独事故といっても、誰も走っていない道を勝手に転んで死んでしまったもの、と認識するのは早合点で、因果関係がはっきりしないものを単独事故扱いにしている可能性もある。
右折時の事故は、いわゆる「右直事故」だ。
バイク乗りなら右直事故の危険性をイヤというほど聞かされているだろうけど、一方のドライバーたちはどうだろうか。
たとえば「深視力」を重視される大型車両のドライバーたちは、自分たちが運転するクルマが急発進や急制動などの機敏な動きが出来ないことを重々承知しているので、右折以外のマシンコントロールにも気を遣うところが多いのは、クルマの挙動を見ていてもわかる。
経験上、極めて感覚的な意見なのだが、直進するバイクが近づいているにも関わらず、右折するのはいわゆる普通のドライバーというか、仕事でクルマを運転する人たち以外だったりする。
対向車に気を取られるあまり、曲がった先の横断歩道を渡ろうとする歩行者に注意を払っていないのもこのタイプだ。
やや乱暴な言い方かもしれないが、この手のドライバーは対オートバイだけではなく、ほかのクルマや歩行者、自転車たちにも危険な運転を繰り返しているとみる方がいい。
だからといってサイコパスな人格でもないし、それ以外はごく普通の善良な人々だと思う。
何でこうなるかというと、普段クルマを運転する機会がほとんどなくて、通勤はもっぱら電車で年間の走行距離が5,000km以下なんて人たちが、休みの日に家族サービスや買い物で街に出れば、前後左右からやってくる他の車両や歩行者に対処できなくなってしまうのだろう。
こういう人たちは何十年も昔から「サンデードライバー」として認識されている。
サンデードライバーの運転技術の是非は置いといて、週末や祝日には、そういう人たちがたくさんいるし、遠くの観光地へ行って不慣れな道で運転が精彩を欠くのはドライバーもライダーも似たようなものだ。
そんな運転者が沢山いる中で「こっちが優先」とアクセルをさらに開いて右直事故になって、道交法を軸にした争いでは勝てるかもしれないが、愛車はただじゃすまないだろうし、それで死んだら勝ち負けを争っているどころじゃない。
相手が同じように運転免許証を持った人間だからルールを持ち出すのであって、向こうに見えるのが牛や馬だの獣たちだったら?
ちょっと前、山の中の細い林道の行く先に、クマがこっちを見て停まっていた。
対向車だったら「どっちが優先か」と考えるかもしれないが、相手がクマだと「早く何処かへ行ってくれ」と祈るばかりだ。
ようするに、同じような気持ちで対峙して「あのクルマは自分が通り過ぎる前に曲がるかもしれない」
と考えれば、アクセルを開く代わりにブレーキレバーに指をかけるだろう。
それでうまいことやり過ごしたら、それが勝負で言うところの「勝ち」なのだ。
ストリートだけじゃなく、サーキットも同じようなもので、いつでもどこでも勝負をかけていたらマシンも身体もチェッカーフラッグを越えられない。
道交法の解釈としては間違っているかもしれないが「右折待ちの車輛を見かけたら、直進車に対して曲がってくると思え」と思いながら運転している。
何十年も前、夜中の道で大型ダンプに右直事故でひき逃げされた自分が言うんだから、間違いない。
無事に帰宅したヤツが、真の勝者。
これだけは、間違いない。