温暖化で11月だというのに20℃近くまで気温が上がったこともあったけど、12月になると東北にはしっかりと冬がやってくる。
レジャーとして乗るバイクも春までお預け、というライダーも多い(あえて冬山へ突入するオフ車乗りもいるけど)。
バイクに乗れない冬の間、バイク雑誌を眺めて次シーズンに思いをはせたり、OHなどシーズン中にはしたくないような整備に時間を費やすことも。
ガソリンタンクのサビ取りも、効率よく作業すれば2日くらいで出来るので、天候不良でバイクに乗りたくない休日を利用すれば可能だったりするのだが、今回のガソリンタンクはセオリー通りに行かなさそうな案件。
内側はともかく、外側もとんでもなく錆びている。
どこから出土してきたのか…このタンクが載っていた機体は、これ。
1996年12月に購入した、自分にとっての初代Z1R。
ご覧の通り、キャブからはオーバーフローしており、まともにエンジンがかからないし、アイドリングもしない、バイク屋からは「こんなので旅に出たら死んでしまう」と太鼓判(笑)。
それでもビッグバイクの乗り方を教えてくれたのはこのZだし、Kawasaki Z Owners Clubとの縁も出来たわけだし、Binky Rominsky や Mat Armstrongとの出会いも、このZなしには実現しなかった。
新しいZ1Rを手に入れた後は不動車となり、エンジンと外装の一部以外は解体部品屋に引き取られてしまった。
今でも後悔しているのは、マシンをまるごと日本に持って来ればよかった、ということ。
実際に乗ったかどうか分からないけど、もしかしたら、もう少しカスタム色の強いZ1Rを作れたかもしれない。
最後にこのZが動いたのはオーストラリア一周の旅に出る直前、1997年の4月下旬か5月頃。
フレームからはぎ取られ、25年もの間、緩慢な死を迎えようとしていたのだ。
再び、このタンクを目覚めさせようと思ったのは、自分にとって最初のZはこのマシンだから。
トップガン・マーヴェリックでも、トム・クルーズは色あせたGPZ900Rを大事に乗ってたじゃない?
キレイに塗り直した外装もいいけど、やっぱりオリジナルでしょう、ということになったわけです。
とにもかくにも、まずは錆を落として、腐食による穴の有無を確認しなければならない。
ほかの錆び落としも試したことはあるけど、安心できるのが『花咲かG タンククリーナー』。
ロングセラー商品だけあって、信頼性は抜群。
外側、内側を処理するということで、分厚いビニール袋にタンクを入れる。
用意したのは「U-PACK 重量物パック」。
厚みが0.1mmってどれほどのもの?と思ったけど、かなり分厚い。
こんな風にタンクを入れたら、あとは希釈した「花咲かG」を注ぎ込む…のだが「花咲かG」の内容量は1リットル、最大20倍の希釈だから20リットルを単に注いだだけでは、行き渡らなくなる。
そこで、こういう風に考えたわけ。
袋を出来るだけタンクに沿わせるように巻いて、フレームに当たる部分もスペーサーをかませてやれば、袋の体積も小さくなって処理液も行き渡りやすくなるだろう、と。
「でもZ1R2型のタンク容量は20リットルだから、それだけじゃ足りないんじゃない?」
そう来ると思いましたよ。
なので、こういうものも用意しました。
プチプチですな。
こいつをタンクの中に突っ込んで「かさまし」をして、外に行き渡る分を捻出するわけだ。
そして、出来上がったのが、これ。
何やら怪しげな感じですが…ここに処理液を入れてやればOK。
…のはずが、いざ、20リットルにも及ぶ処理液を入れてやると、水の重みでどんどん袋が膨らんでゆくじゃありませんか。
「これは無理か?ちょっと危ないか…?」
どうにかしようとした途端、袋の口が緩んで処理液をぶちまけてしまった。
ミッション失敗…
みすみす4000円弱を文字通りドブに捨ててしまった…(涙)。
悔しいのでもう一度、花咲かGを調達。
作戦を変更して、まずはセオリー通り内部を処理。
終わったら、外側を考えることに。
気温20℃近い日、まさに作業日和。
まずはプラベニ(プラ段とも呼ばれる)を折り紙のように折って箱をつくる。
処理液がこぼれても床を濡らさずに済むし、満タンのタンクを動かしやすくするためでもある。
この時、重要なのは決して刃物を使わないこと。
プラベニは、爪でこすっただけでも折り目がつくので、それをガイドにして箱を折る。
よく分からん人は、タテヨコ1:2の紙を用意して、箱作りを練習しましょう。
箱をつくったら、拡がらないようにテープなどで固定する。
花咲かGは、40℃から50℃のお湯で施工しろと書いてあるので、まずは適当に水を注いで、そこに熱湯を入れてやる。
自分は「ちょっとこれじゃ入れないよ」くらいの熱い温度にして施工している。
というのも、お湯の温度はどんどん下がっていくから。
注ぎ口のところまできたら、ラップやマスカーでタンクの注入口にフタをして、さらにビニール袋で覆う。
できるだけ揮発しないようにするわけです。
日が出ている間は、バイクのカバーを利用して保温、反応を促進する。
日が暮れたら、家の中に入れてやる方がいいでしょう。
「そんなことして、ご家族に怒られませんか?」
普段やらないようなことをやると怒られるので、常日頃、家の中で怪しげな作業をすることが大事。
その昔、風が強くて塗装が出来ない時、埃がついたら大変だ!と風呂場をマスカーで覆って、家の連中がいない隙に外装を塗装しまくって帰宅する前に撤収したこともあったけど、ぜんぜん臭いが取れず、別の意味で大変なことになったけど。
花咲かGは、あまり強いニオイがしないし、ちゃんと養生してやれば無臭に近い。
臭くなければ、だいたいスルーされるので、心配な人は「洗剤に漬け込んでいる」といえばOK。
実際、成分表にも「界面活性剤」と書いてあるので。
サビの状態にもよるけど、経験上一昼夜でだいたいのサビは落ちます。
でも、気温が低い場合は、2日くらい寝かせておくとよいかも。
イメージしづらいかもしれないけど、これが2日くらい漬け込んだタンクの内部。
ファイバースコープが無い限り、タンク裏側の全てを確認することは出来ないけど、隅っこなどのサビが落ちていたら、ほぼOKでしょう。
それと、よく確認した方がいいのは、タンクの天井部分。
施工中、タンクをひっくり返していればいいけど、天井部分まで液が満たされない場合、ここに残ったサビが後に拡がることもある。
そのためのビニール袋とプラベニなので、ひっくり返して放置することも大事。
次に、いよいよ問題の外側のサビ落とし。
プラベニの箱でもいいんだけど、強度的に不安。
というわけで用意したのが、ホームセンターで売っているストレージボックス…の中古。
もともと、18リットルの灯油タンクを並べて入れるのに使用していたもので、いまは収集日前にパンパンになったゴミ袋の避難先として使われている。
寸法も丁度良かったので、コレを使う。
ガソリンタンクの中に入った処理液をボックスに移し、ここにガソリンタンクを浸けてやる。
しかし、そのまま入れると上までヒタヒタになってくれない。
なので「お風呂のお湯を節約する」要領で、隙間に梱包材だの木の端材、レンガなどを詰め込んでやる。
あとは、普段から気になっていたサビついたネジやボルト、パーツ類などもついでに入れてやると、かさ増しにもなるし一石二鳥。
どう頑張っても隠れなかった上の方は、処理液を浸したティッシュペーパーを敷いてやる。
毛細管現象で液に濡れたままになっている…はず。
そしたら、プラベニを折り畳んで「落し蓋」状態にして、さらにマスカーで密閉。
これで蒸発することもないハズ。
この日は気温もグッと下がってきたせいか、うまいこと反応が進んでいない。
漬け込みを延長して様子を見る。
こうやって角度を変えて、漬け込みたい場所に処理液が触れるようにする。
そして漬け込みが終わって、ガソリンタンクを引き揚げてやる。
なかなかいい感じ。
若干残っているサビは、別に取っておいた「リンス液」を使って除去する。
リンス液とは、取説にもあるように、使う前の処理液を別にしておき、最後の最後、コーティング的に使うモノ。
1リットルも作らなくていいんじゃない?と思うので、先に50ccを取って10倍で希釈、500ccもあればリンスは十分だし、あとで発見したサビの残りはこの液を使って除去する。
リンスする時は、液を入れてグルグル回したり振ったりする。
穴は養生テープなどで塞いで、液が飛び散らないようにする。
結構しんどいので、これだったら霧吹きの瓶に入れてシュッシュした方がいい気がする。
余分な液体は完全に出し切り、自然乾燥させる。
乾燥の途中でサビが再発生。
「サビの根っこ」のようなものがあるんだろうか?
取り切れないサビは、リンスを筆でペタペタ塗って、さらにティッシュペーパーにリンスを含ませたうえ、マスカーで密封。
塗装が経年劣化や何かのケミカルのせいで色あせたりしているけど、軽くワックスをかける程度で終わりにする。
ガソリンを入れている限り、そう簡単にサビつかないだろうし、タンク表面のサビなどは「味わい」としてあえてそのままにする。
サビが深刻になってきたら、その都度、サビ取りクリーナーで処理すればいい。
そして、いよいよ換装開始。
まず燃料コックを移設。
純正コックも残っているんだけど、ツマミ部分が長くてキャブに当たってしまう。
普通はここでPINGEL、最近はGOLANに置き換えるんだけど、そんな予算はないので…
次にセンサーを移設。
パッキンは先日交換したばかりなので、そのまま使用。
そしたら、タンクにガソリンを入れてやる。
この時、サビによるピンホールが開いていると、ガソリンが漏れ出してくるので、少し入れてから様子を見る。
特にサビ取りした後は、漏れ出すことも多いので要注意。
問題なかったので、いよいよ載せ替え。
遠目に見ると、あまり違いが分からない?
ヤレてます(笑)。
シートの破れ具合と言い「当時物」のオンパレード(笑)。
1996年に買った時は本当に調子が悪くて4か月くらいしか乗れず(その後、別のZ1Rを購入した)、とにかく不満タラタラだったけど、こうして26年経って日本を走ることになった。
26年前の今頃…まだ24歳?
24歳なんていったら、可能性のカタマリみたいなもの。
当時には戻れないけど、気持ちだけは20代に戻ったつもりで、来年から新しいスタートを切れるように。
26年間休んだ分、来年から26年、頑張って走ってもらいましょう!
その頃、76歳か(笑)!
バイクに乗るどころか、生きてるの!?
健康に気をつけて乗り続けられるように頑張ります(笑)。