リチウムバッテリー+MOSFETレギュレーター+ステーターコイル総括

ちょこちょこと問い合わせやらアクセス数が多いのが…
MOSFETレギュレーターレクチファイアについて

おそらく、古い空冷ZにMOSFETレギュレーターレクチファイアとリチウムバッテリーを載せる件について調べているのだろう。

ひとつひとつ解説していきましょう。

リチウムバッテリー

ここでは、自分でも使用しているSHORAIバッテリーがリリースしているリチウムバッテリー(LiFePO4)について解説。

自分がリチウムバッテリーにした理由は、以下の通り。
軽量:鉛比で約1/3〜1/4。取り回し・振動応答が改善。
電圧安定:クランキング時の電圧降下が小さく、点火が安定。
自己放電が少ない:長期保管に強い。
充放電効率が高い:短距離走行でも回復が早い。

冬場、気温が低い時、始動性が落ちたらバッテリーを「活性化」させてからセルを回すとよい、と書かれている。
オカルト的な言い回しだけど、気温が下がると、バッテリー内部の電解液中のイオン移動速度が低下し、内部抵抗が増大する。
この状態でセルモーターを回そうとしても、高い抵抗が壁となり、大きな電流(クランキング電流)を流すことができない。
この場合、ライトを点灯させるなどの「儀式」を数十秒ほど行うと、わずかな放電が始まる。
放電反応に伴う化学的エネルギー変化により、バッテリー内部で自己発熱が起こる。
そうすると、内部抵抗が下がり、本来の電流供給能力が出やすくなる。
抵抗が減ることで、本来持っている強力な電流供給能力が解放され、セルが勢いよく回るようになるというわけ。

MOSFETレギュレーターレクチファイア

MOSFETの細かい仕様はおいといて。
オートバイに積んだMOSFET型レギュレーターレクチファイアの特徴としては、ステーターコイルが生み出した余剰電力をショート(短絡)させて戻すため、レギュレーターレクチファイア本体はヒートシンクも要らないんじゃない?というくらいの温度。
そのかわり、ステーターコイルに負荷がかかる。
時々、MOSFETレギュレーターレクチファイアを入れてステーターコイルが焼けた、という話を聞くことがある。
すべてがMOSFETレギュレーターに原因があるのではなく、配線劣化や元々の絶縁低下など複合要因の中で、このプロセスが影響しているケースもあるのだと想像している。

一方のオープンタイプレギュレーターレクチファイア。
電圧が規定値に達すると、ステーターコイルとバッテリー間の回路を「開放(オープン)」にするレギュレーターレクチファイア。
電流が流れなくなるため、ステーターコイルの負担(過負荷)が軽減される。

「じゃあ、昔ながらのレギュレーターレクチファイアでいいじゃん」
と思うかもしれないけど、旧式のレギュレーターは、昔のオープン式は、回路を遮断する際の「キレ」が悪く、 回路をカットした瞬間に発生するスイッチング時に発生するサージ(電圧の跳ね返り)を処理しきれず、レギュレーター内部の素子が熱でパンクしたり、逆に電装品を破壊したりすることがあった。
また、スイッチング速度が遅い( ON/OFFの切り替えが現代ほど高速ではなかった)ため、出力される電圧に「ゆらぎ(ノイズ)」が多く、バッテリーへの負担も大きかった。

現代の高性能オープン式(新電元製SH847など)は、旧来のモノよりも高度に制御されている。
1秒間に膨大な回数のON/OFFを繰り返すことで、出力電圧をほぼ一定のフラットな線に保ち、低損失素子の採用しているため、昔のモデルに比べれば「効率よく」カットできる。
コイルからの跳ね返りを安全に逃がす設計が完成されており、信頼性が飛躍的に向上。
仕事量が多いため、MOSFET式よりも発熱量は増えるけど、ステーターコイルとレギュレーター、仮にダメージを受けて交換するならどちらが安いかというと、レギュレーターの方。

ステーターコイル

ここまで書いた通りで、結局のところステーターコイル(と配線)が脆弱だとアウト。
弱い箇所に負荷がかかり続け、不具合が生じる。
ステーターコイルが焼けた、というトラブルはまさに典型例。

しょっちゅう開けて調べる場所でもないので、サードパーティーで販売する同種のコイルに変更するとか、あるいはPAMSが販売しているアップデートキットに換装した方がいいんじゃないだろうか。

ステーターコイルはダイナモカバー外した瞬間、オイルがダラダラ漏れるし、一度外したらガスケットも新品にしないといけないから、億劫になるのも分かる。
ここを開ける用事ってほぼないから。

なので、どうせここまでやるなら、良い物を入れたい。
空冷Zの場合、ご存知の通りステーターコイルの純正部品はとっくに販売中止。
昔は2万円から3万円で入手出来ていた他車種のパーツも、いまは5万くらい。
あとは、専門業者にリビルド(配線巻き直し)を依頼するとか。