YAMAHA DT125R(34X)をOSR-CDIで救済してみる

雑記帳

2020年のコロナ禍と東日本大震災から10年が過ぎようとする中、天変地異の時にはイロイロな準備をしておくことに越したことはない、と妙にイキリたった2020年の3月。
震災直後に換えたDTのタイヤも野ざらしのおかげでピキピキのペキペキにひび割れてしまっている。
これじゃダメでしょ、とタイヤ交換にバイク屋へ向かったはいいけど、さっぱり吹けない。

バラして調べたら、何とYPVSが動かないじゃないですか。
YPVSというのはYAMAHA POWER VALVE SYSTEMの略称で、パワーバンドに入らないと使い物にならないといわれる2ストのエンジンに「自ら動くバルブ」を搭載して、どの回転数でも使えるようにした機構である。

コロナ禍でステイホームが続く中、まず試したのはYPVS本体の修理。
https://z1r2takeda.com/2020/05/24/yamaha-dt125r34xypvs/
再生を試みるも失敗に終わり、諦めてメルカリだかヤフオクでYPVSを落札、着けてみたら初期動作はするけれど、中高回転域でもバルブが開かず吹けないまま。

ということはCDIだろうか?
分解して構成部品を入れ替えてくれるショップもあるが、工賃込みで30,000円以上。
しかも動作保証はナシ。
困ったものである…

救世主 OSR-CDIとの出会い

ネットをいろいろ探っていると、ゼロから回路を設計してCDIを製作、さまざまなマシンに対応させているブログを発見。
https://rilassaru.blog.jp/
CDIとYPVSの機能を持った電子部品を設計している。
しかも、設計図から製作方法、部品の調達先までフリーで公開しているではないか。

とはいえ、自分がマネできるとは思わないので、ブログの管理人(設計者)にコンタクトを取って「CDIの修理について情報ありませんか?」と問い合わせたところ、
「中古品のリスクを抱え続けるよりもOSR-CDIを試してみてはどうか」
とオススメされる。

確かに、動作が疑わしい中古品をネットで購入しても1万円以上。
各種CDIを修理している業者に至っては動作保証無しで3万円以上。
他車種新品は、これまた動作保証はないまま1万数千円。
OSR-CDIは部品代だけなら高く見積もっても1万円以下で収まる可能性が高い。
だったら、まったく新しいモノを作った方がいい。

そもそもOSR-CDIとは何か?

OSR-CDI (Open Sourced Replica CDIの略)は「80年代から90年代のヤマハ2ストローク車用に作られているAC-CDI」である(Webより抜粋)。
管理人さん+有志の方々が長い時間をかけて蓄積したノウハウの結晶で、初期の投稿から見ればわかる通り、時を重ねるごとにバージョンアップされ、いまなお進化し続けている。

驚くべきことは、その名の通り「オープンソース」としてすべて情報公開されており、誰でも自由に作ることも出来るし、自分なりにアレンジすることも出来る(ファームウェアなどのDLにはFacebookのグループに参加する必要があるが、すぐに承認されるので事実上、フリーの状態)。
詳しくは、こちらを読んでもらえると分かるハズ。

OSR-CDI 作り方

OSR-CDI 製作手順

製作手順は、ざっくり言ってこんな感じ。
●基板のCADデータを「基板製作会社」に発注。
●同時進行で各パーツを通販で購入。
●基板に電子部品や配線をはんだ付け。
●PCと接続、ファームウェアと点火マップをインストール。
●機体に載せたら完成。

メチャクチャざっくりしているから、1日くらいで造れそうでしょ(笑)。
まあ、実際、パーツが揃っていて手順が分かっていたら1日で出来ないことは無いけど、おそらくそれは無理…多分、体力が続かない。
セクションごとに解説していこう。

基板発注

マニュアル推奨通り、深セン(中国)の工場に発注。
国際郵便の送料を合わせても2,000円前後。
必要なのは1枚だったが「不良品対策」なのか、5~6枚送られてきてビックリ。
Made in Japan だと10倍くらい高額。
ちょっと複雑な気分。
コロナ禍でも10日くらいで到着したが、通常だと数日程度で受け取れるそうだ。
基板のCADデータにも驚きだが、USBソケットの窓がついた横蓋もセットなので無駄がない。
どれだけ至れり尽くせりなんだろう。

パーツ購入

基板に刺さる抵抗、ダイオード、コンデンサ、さらにはマイコンなど、ケースからビスまで合わせれば30種類以上のパーツが必要となる。
しかしながら、ひとつずつ入手先と商品リンクまでマニュアルに書かれているため、指定された部品店のサイトでどんどんクリックしていけばOK。
車種によっては不要なパーツもあるので、そこは臨機応変に。
こんなに購入して、いったいいくらになるんだ?と不安になるけど、送料込みで4,000円位。
抵抗など100本1パックで売っているものは、余剰在庫になるので、同志を見つけてワリカンしたら、より安く済む。

ちなみに、コストがかさむのは、電子部品よりもハーネス用の配線。
ある程度、長さには余裕をもってオーダーするため、それなりの金額になる。
特に2色線は単色よりも高くつくうえ、選択肢がなかったりするので「ちょっとお高く」なる。
チリツモの理屈でオーダーしてみると全部で5,000円くらいになった。
自分で組んで理屈が分かれば「何も純正色にこだわらなくてもいい」と気づくのだが、ド素人は当然ながら、出来るだけ純正品と同じ色で揃えた方が無難。

同封されてきたチラシ。
電子部品組み立てを趣味とする人達へのお知らせだから、こんなに細かい文字でも受け入れられるのだろうけど…みんな何を作るんでしょうね。

はんだ付け

「一度もやったことが無い」という人は、子供でも作れる「工作セット」のようなもので、何か作ってみるといい。
これ、ウソでも誇張でもなく、とにかく電子部品を基板にはんだ付けする、という作業を知っておく必要がある。
半田ごてやハンダの使い方、正しい部品の取り付け方など、勉強になると思う。

いきなり本番でやってもいいけど、組みつけて動作しなかったり、電子部品を壊したりするとエラいことになる。
特に、電子部品の不具合は見た目では絶対に分からない。
オシロスコープやテスターを当てないと判断できないし、それすらどうやって調べるかも分からないでしょう?

OSR-CDIの作り方のページにもはんだ付けのやり方が書いてあるので、それで少し練習して、自分が持っている半田ごての具合というか、使い勝手を知っておく。
特に注意すべきは「溶けないな」といつまでも部品に熱を加えないことだ。
3秒くらいでキメないとダメなんだそうだ。

OSR-CDIは収納ケースのサイズに合わせたのか、基板のプリントが非常にタイト。
特にUSBソケット、三端子レギュレータなどはギリギリのクリアランス。
普段、電子工作が趣味だというならまだしも、はじめて基板を触る人には、相当ハードルが高い。
現に自分もUSBソケットのはんだ付けに失敗して、PCが基板を認識してくれなかった。

見て、この細かさ。
隣と絶対に触れ合っちゃダメ。
多分、認識しないとか失敗する人って、こういう場所のはんだ付けで失敗しているんだと思う。
最後にファームウェアを焼き付けるのにPICkitという機材でCDIに搭載されたマイコンにプログラムを書き込むのだが、自分のように「認識しない」「どこか間違っている」と慌ててしまうので、USBソケット、読み書き用のインターフェース、マイコンなどを載せたら認識するか試してみるといい。
特に配線を基板に取り付ける前にファームウェアを書き込んだ方が精神衛生上良いと思う。

出来上がったら、振動防止のためにマニュアルに推奨されているボンドで固めてしまった方がいい。

ファームウェア、セッティングソフトをインストール

時々「部品も配線も組みつけたのですが、エンジンがさっぱりかかりません」とFacebookのタイムラインに投稿されるが、ファームウェアのインストールをしていないことも。

OSR-CDIは組んだだけでは動かない。
OSをインストールしないPCと同じね。

基板に搭載したマイコンにファームウェアを焼き付けるためには「ライター」がいる。
詳しい人に言わせれば、昔はすごく高額だったらしいけど、いまでは数千円で手に入る。

推奨されているのが、PICkit3というマイコンライター。
安価な類似品というかコピー品も販売されているが、読み書きエラーになるかもしれないのと、ファームウェアが書けないのが本体製作ミスなのかライターのせいなのか分からないと困るので、少々高いお金を出しても正規品を購入した方が良いと思う。
ワタクシは東北大学で研究している人から借りてきたので、ここはゼロ円。
助かりました。

ファームウェアのインストールは全て英語表記だが、マニュアルの手順通りに行えば大丈夫。
ここでエラーが生じるとすれば、ワタクシのように、はんだ付けを失敗(おとなり同士、くっついてしまっている)しているのでしょう。

ファームウェアの焼き付けが終われば、セッティングそのものにはPICKitは不要。
次にOSR-CDIのセッティングアプリケーションをWINDOWSのPCにインストール(これもマニュアルからダウンロードできる)。
OSR-CDI本体と接続したら、それぞれの機体に応じたマッピングデータがあるのでセーブしてやる。

手慣れてくると、マイコンとUSBソケットなど必要最低限のパーツだけ組み込んで、先にファームウェアをインストールする人もいるみたい。

機体に載せる

「もう、ここに決めた。絶対に動かさない」という場所を決めないと配線の長さが決められない。
田舎の人間で心配性なので「少し余裕を持たせるクセ」があり、結果的に「もう少し短くしておけばよかった」と毎回のように後悔している。

他の車種は分からないけどDT125R(34X)では、いくつか注意しなければならない点がある。
ひとつはカプラ。
純正CDIのカプラ、この緑色のカプラは、一見するともうひとつのカプラと似ているが、実は全くの別物。
切り欠きの向きも違うし、共通しているのは端子だけ。
配線販売店にも問い合わせたが見つからなかったので、ここは入手しやすい2Pカプラに置き換えたらいいと思う。

もうひとつ、これが致命的なのだがピックアップコイルの極性。
「白/緑」と「白/赤」の配線。
配色通りに組みつけると、実は極性がプラスマイナス真逆となり、キックを下ろすとケッチンを食らったりミスファイアで近所中に銃声が鳴り響くので要注意。
34Xの上位互換機種、37F(DT200R)でも同様の現象が起きたらしい。
設計者の方もおっしゃっているが、YAMAHAの配線図はところどころミスプリントがある。
ここをかわせる技術や知識があると良いんだろうけど…
とにかくピックアップコイルの部分については、マニュアルでも注意されているので要確認。

純正のCDIとYPVSはエンジンの上、背骨の下に搭載されている。
水冷とはいえ、エンジンの真上はあまり好ましくないので、バッテリーケースの上へ。
ここなら雨も当たりづらいハズだけど、念のために防水加工しておいた方が吉。
製作者の方も言っているが振動によるパーツへの悪影響は深刻で、徹底対策した方が良いとのこと。
あと、USBソケットの開口部はフタをするなど、ここも対策が必要。

相変わらずの適当さ加減。
配線はハーネス用のチューブとかスパイラルで仲間同士をまとめている。
やや長めにカットしたのは小心者というもあるけど、フェンダー側に置いた方がいいのかも?と、こちらへの移設も想定しているため。
ちなみにYAMAHAのステッカーが貼ってあるバッテリーケースは、DAISOで売っていた台所用品である。
100円ショップが部品の調達先になってしまった…

乗り心地

点火マップなどのセッティングに関する知識はゼロだが、DT200R用のマップデータで問題なく走っている…気がする。
4000回転以下のグズつきが、キャブセッティングによるものなのか、進角やバルブ開閉によるものなのかは不明だが、4000回転以上に行くと素晴らしく吹けあがる。
この辺りは、まだまだ煮詰め直す必要がある。

OSR-CDIの完成品が販売されている…?

悩みながらOSR-CDIを製作していた頃、Facebookのグループで「OSR-CDIをオークションで販売している出品者がいる」という情報が。
もちろん管理人には許可を取っているわけではなく、自分で大量に部品を発注して製作したものを出品しているのだ。
お問い合わせはこちらへ、と製作者のブログへ誘導するなど、やや悪質。

製作の手間を考えると、部品代+工賃で3万円でも安いくらいなのだが「お金やるから造って」と簡単に言うものでもないかな、と…
プラモデルでもそうだけど、自分で苦労して、DIYで成し遂げるからカタルシスを得られるわけだし、何よりすべてのことが自己責任。

CDIが走行中にぶっ壊れたせいで転倒や事故になっても、責任を負うのは自分、ということになる。
さんざん自分でいじるライダーなら、十分に理解しているだろうけど。

それにマニュアルを読み解きながら、コツコツと造るプロセスもまた楽しいひと時であり、これをすっ飛ばして完成品を手にするのは「チート」のようなものだ。
仕事やら生業なら、ライフハック的な行為も必要だけど、趣味だからね。
回り道、遠回りも楽しさのひとつでしょ。

とりあえず、このサイトでのOSR-CDIの話はオシマイ。
その後についてはブログ版の方でアップデートする…かも。