初心者も上級者も夏キャンプの準備はOK?

雑記帳

バイク乗りには憂鬱な長雨のシーズン到来だが『夏を楽しむための準備期間』と思えば、そう悪くはない。
仲間たちと賑やかにアウトドアを楽しみたい人達も多いだろうけど、依然としてCOVID-19の感染リスクは継続中。
一緒のテントに寝泊りして食事を共にしたことで感染した可能性が高い、なんて事例もある。

大人数で楽しむのはもう少し先のことになりそうだが、ソロ・キャンプだったら感染リスクは軽減できる。

もともとバイク乗りには、ツーリングもキャンプも「ソロ派」が少なくないので、今回は自分の装備点検も含めて泊りがけのツーリングに役立つアイテムを紹介したい。

テント

量販店のショールームでは、広くて快適そうなテントが並んでいる。
広々と快適な空間になっているのに、畳んでしまえば意外に小さくおさまるなど性能は年々アップ。
「大は小を兼ねる」だし、多少大きい方が使い勝手が良いだろう、と思うかもしれない。
確かに積載量を気にしなければ、サイズは大きい方が良いのだが、問題は設営。

サイズが大きくなり、ポールの数も増えてくると、一人での設営が困難になる。
「ひとりでも簡単に建てられますよ」という店員の実演を見て納得してはいけない。
店員は商品の扱いに慣れているが、買う側は練習無しで使うことも多い。

それに何より、テントを張る場所は店内のような屋内ではない。
足場だってそんなに良いとは限らないし、強い風が吹き、雨が降ることもある。
たとえシンプルな造りでも、大きいテントを独りで建てられるようになるまでには、それなりの技術と経験が必要になる。

建てる時に苦労したものは、しまう時はそれ以上になることも忘れてはならない。
そもそも、ソロ・キャンプに4人用の大きなテントは必要ないのだ。

なら、ソロ・キャンプには一人用テントが正解なのか?横になって寝るだけだったら、畳一畳(90cm×180cm)より一回りくらい大きければ十分で、実際一人用テントのサイズはそんなものだ。

重量も1kgあるかないかのものばかりで、UL(ウルトラ・ライト)ハイクという無駄な装備を出来るだけ持たないスタイルで山を登る人達が使うテントは小さなリュックサックに収まるほどのサイズだ。

だが、オートバイ乗りは自分で荷物を背負うわけではない。
グラム単位で背負う重量を減らしたいクライマーや自転車乗りなら別だが、バイクツーリングならシェイプアップよりも快適さを求めた方がいい。

特に悪天候時や丸一日走って疲れた時、やっとテントを設営したら、無造作に荷物をテントの中に放り込み、さっさとゴロリと横になりたくなる。

この時、一人用テントだと、荷物やヘルメットの置き場所に気を遣い、なかなか休めない。
だったら、前室つきの2人用テントがオススメ。

2泊以上のロングともなれば荷物もそれなりになるが、メインの大きいバッグとヘルメット、上着を適当に並べても、寝袋を拡げるスペースは十分に確保できる。

20年以上使っているテントはダンロップのツーリングテントR-215。
間口220cm×奥行120cm×高さ125cmのドーム型テント。

仕事で2週間近く山の中に滞在したこともあったが(どんな仕事よ!)、中で書き物も出来るし、結構快適に過ごせる。
これを2人で使おうとすると狭くなり、サイズにもよるが荷物を中に入れると快適性は損なわれる。
1人で使うなら2人用、2人なら3~4人用、と余裕を持たせた方がいいだろう。

テントを設営する場合はグランドシートを用意した方がいい。
地面からの湿気を防ぐだけではなく、撤収時にテントを乾かす手間が省ける。
これがないと、空っぽのテントをひっくり返して日干ししてから収納しなければならない。

ブルーシートでもOKだが、ケチって薄いものを選ぶと、すぐに破れたりほつれたりするし、目が粗いので湿気を防ぐことが出来なかったりする。
場合によっては、グランドシートを購入した方が安上がり、なんてこともある。

ストーブ

キャンプでテンションが上がるイベントが「食」。

キッチンだったら「雑」なレシピもアウトドアが舞台というだけで許されるし、それがまた美味い。
家族や大人数で行くなら、大掛かりで本格的なBBQ装備も持って行けるが積載量が限られたバイクだとそうはいかない。
煮炊きするにも、コンパクトにおさめたいところ。

合理性を考えたらガスストーブ。
季節柄、気温も高いだろうからボンベの圧力が下がらないし。

これが寒い時期だとボンベ内部の液化ガスが気化する際、気化熱によって冷たくなって圧力が低下、火が弱くなる。

ガスストーブのメリットは何といっても始動性と火力。
昔はボンベの入手先に四苦八苦したけど、いまやコンビニ並に多くなったホームセンターで間違いなく手に入る(ただし、天災が起きた直後は品薄になるので要注意)。

ガスストーブのカテゴリーで「変わり者」なのがカセットコンロ。
居酒屋で鍋を頼むと出てくる、あの卓上コンロだ。
土鍋を置いてもびくともしない安定性、もちろん火力は申し分ない。
いまではアウトドア専用品もラインナップされている。

炎の面積(?)も大きいから、網を使えば焼き魚、焼肉だって問題ない。
やや収納性は悪いが、アウトドアでも豪快に食べたいなら選ぶ理由になるはず。

ガソリンストーブは、ふた昔前はストーブの主役だったが、今はどの程度売れているんだろう?
あるベテラン店員に聞いたら「いまはガス・ストーブの方が主流」なのだそうだ。
自分でもMSRのガソリンストーブを持っているが、正直、使用頻度は落ちている。

「ガソリンストーブにメリットはあるのか?」と聞かれたら、ちょっと難しいかも。
手軽さ、使い勝手はガスに軍配が上がるのは確か。
でも、ガソリンストーブの良さは、その使い勝手の悪さにあるかもしれない。

燃料ボトルと本体を繋ぎ、シャコシャコと何度もポンピングして圧を高めて、少しバルブを開いてガソリンが出てきたら着火。

最初のうちはメラメラと大きく燃えるだけだが、炎の熱でパイプ内部の燃料が温められ、気化しやすくなると、ごうごうと音を立てて青白い炎を作り出す。

何分もかかるわけではないけど、儀式めいたひと手間が「いま、自分はアウトドアに居るのだ」という気持ちにさせてくれる。

料理が出来る間、炎が奏でる音を聴きながら景色を眺めるのも楽しい。

ガスボンベのように使い捨てのパーツもないから、年月と共に風合いが出て来る。

性能だけでは比べられない魅力があるのが、ガソリンストーブの良さだ。
また、ものにもよるが、ホワイトガソリン以外の燃料も使えるタフでヘビーデューティな製品もある。
日本のキャンプではオーバースペックかもしれないが、そういう道具を使いこなしている、という満足感はガソリンストーブならではだ。

もっと非日常を味わいたいのであれば、小さめのBBQコンロ、焚火台もある。
これ自体はコンパクトに折り畳めるので、それほどかさばらない。

ガスやガソリンのような手軽さと炎の安定感はないが、薪や炭が静かに弾けながら揺れる炎には、いつまでも見入ってしまう魅力がある。
炭火で調理したスローな食事を楽しみたいなら、マストアイテム。

問題は燃料の薪をどうやって確保するか。
現地調達は、今の日本だと、ほぼNG。
管理された山林には、薪になるような木は落ちていないし、その辺の樹を切ったら犯罪になる。
もとより、乾燥していない木は薪として使うことが出来ない。

大きなキャンプ場であれば、薪を売ってくれる可能性もあるが、必要な分を持参した方が確実。
ただ、後始末が問題。
灰になるまで燃え尽きてしまえば片付けも楽だが、残った炭を埋めたり、放置する宿泊客もいて問題視されている。

「自然のものだから分解する」というイメージがあるかもしれないが、そう簡単に土には還らない。
キャンプ場の指定された方法で処分する、棄てる場所がない海や河川なら他のゴミと一緒に持ち返ること。
難しそうならガスやガソリンを使用したストーブを持参するのが吉。

クッカー

写真は、20年以上使用しているステンレスの安物。
コーティングされているわけではないので、火加減を間違えると簡単にこびりつく。

いまでは、こんなものを使っている人はいないだろう。
安くても、表面にコーティングが施されているものばかり。
食材はこびりつかないし、キッチンペーパーで拭き取るだけでキレイになる。
かつて何か月も放浪生活を過ごした経験から言うと、クッカーは三種類あれば十分。

1.米を炊くもの

2.汁物を調理するもの

3.肉や魚を焼いたり炒めるもの

以上。

これにケトルを足すかどうかは個人の好みと積載量との相談。
個人的に装備に加えたいのは「トースター」や「ロースター」。
ラフに直火で調理するのは、アウトドアならではの楽しみ。
それに、アウトドアで朝からトーストを食べられるのはリッチな気分になれる。

こんな簡単な造りのものでも、いろいろと使い道がある。

照明

これも必要不可欠なアイテム。
いまや星の数ほど出回っているから、選ぶにも一苦労。

いろいろな製品を使い倒して、自分のスタイルに合ったものを買うしかない。
…というと話が終わってしまうので。

オートキャンプ場のような整った施設ばかり泊まるなら、ライトを使う場面は限られる。
逆に炊事場にも照明がないような、ひなびたキャンプ場だと、料理や後片付け、トイレに行くにも照明が要る。

そんなときに役立つのは、頭に着ける「ヘッドライト」だ。
両手がフリーになるので、何をするにしても便利この上ない。

陽が落ちてからバイクをいじる時にも大活躍する。
これがトラディショナルなマグライトだと雰囲気や見た目は「いかにもアウトドア」といった感じでカッコいいのだが、片手は塞がってしまう。
口にくわえて作業してもいいのだが、この御時勢、あまり不衛生なのはよろしくない。
ただ、シンプルな作りなのでタフであることは間違いない。
一本、バッグに入れておくのは悪くない。

ヘッドライトとマグライトは作業の時は便利なのだが、食卓を照らすのには向いていない。
頭につけているため、ヘッドライトは顔が向いている方しか照らしてくれないし、マグライトは広く照らすのには向いていない(昔の電球式マグライトはレンズを外すと常夜灯のようにも使えたが)。

食卓を照らすのに丁度いいのは、やはりランタン。
昔からある燃料を使うものは、バイクやクルマに積んでいくとマントルの部分が振動で崩れてしまうため、アウトドアでの使い勝手は決して良いとは言えなかった。
懐中電灯と同じように、LEDの普及によって簡単に使えるようになった。

シュラフ

ペラペラの薄いものから、雪山でも死なないヘビーデューティなものまである。

「大は小を兼ねる」的な発想で、夏のキャンプに氷点下でも快適なシュラフを持参するのはナンセンス。
暑苦しいだけではなく、積載量をいたずらに増やすだけだからだ。

GWあたりから始まり、梅雨でいったん落ち着き、夏場から秋にかけてハイ・シーズンと考えれば「タオルケット+夏の薄い掛布団」の役割を担うシュラフで十分。

シュラフには長方形の「封筒型」と身体にフィットした「マミー型」があるが、積載量に余裕があって快適さを優先するなら封筒型。

ファスナーを全部開けば布団のようにもなるし、寝袋に不慣れな人でも違和感なく過ごせると思う。

マミー型は頭からつま先まですっぽりと覆われるので、寒さに強い。
身体にフィットするように作られているため、収納性も悪くない。

シュラフの素材はダウンと化繊に大別できる。
ダウンは軽くて保温性に優れ、結構いい加減なやり方でも収納袋に一発で収まるのもありがたい。

これが化繊だと、決められた畳み方でしまわないと、いつまでたっても中に入らない場合がある。
あまりの軽さと薄さに「こんなので寒くないの?」と疑いたくなるが、ほとんどその心配はない。

ただし、弱点もある。
水濡れにはめっぽう弱く、万が一、ダウンを濡らしてしまったら早急に手入れをしてやらないとダウンが傷んでしまう。

基本的にはクリーニングに出すのが無難だが、専用洗剤で優しく手洗い(バスタブに水を張って洗うとよい)して水気を切ったら(脱水機にかけてはダメ)、ダウンがずれないように形を整えて陰干し。
しかも、物干し竿ではなく、平らなところに置いて干すのがベター。

乾くまでかなり時間がかかるので、時間の無い大人には「やってられない」作業になる。
そこまでやらないと、あのふんわり感は復活しないし、水に濡らしていなくても、いずれはやらねばならないメインテナンスなのは、ダウンジャケットと同じ理屈である。

一方の化繊。

これもひと頃よりは、だいぶ軽くなって使い勝手も良くなってきた。
多少濡れても水分が飛んでしまえば、ほぼ元通りに復活する。
ダウンのような面倒な手入れも要らない。

衣類と同じように洗濯機に入れて洗うことも出来る(ダウンもモノによっては洗濯機や乾燥機が使える)。
本当はダウンと同様の手間で干すのが良いが、この辺りは手を抜いてもそれほど問題はない。
使ったことのない人は、化繊製品に慣れてからダウンを買っても良いと思う。

注意したいのがシュラフに設定されている温度。
T Comfort(快適温度)とT limit (下限温度)、これを馬鹿正直に信じるとエラい目に遭う。
たとえば下限温度がマイナス5度だとして、これを「マイナス5度の中で眠っても問題ない」と解釈しない方がいい。

これはマイナス5度でも「凍え死ぬことは無い」という意味で、快適な眠りを保証する温度ではない。
快適さを考えたら、状況にもよるが少なくとも+5℃は見ておいた方がいい。

そのほか便利なもの

■マット
シュラフの下に敷く。
目立たない装備だが、あるのとないのとでは快適さは天と地ほどの違いになる。
グランドシート+マットで地面からくる寒さや湿気も防いでくれる。

■折りたたみ椅子&テーブル
目立たたない装備だが、こんな小さなものでも、あると食事はしやすいし、疲れも取れる。
特に悪天候などで地面が乾いていない場合、これらがあるだけでだいぶ助かるハズ。
サイズも結構選べる。