標高1200m以上もあるキャンプ場は、朝の冷え込みがキツくなるかと思ったけど、ギリギリ半袖で過ごせる気温。
それでも吐く息は白く曇り、下界との差を感じさせる。
朝ごはんは、前日にスーパーで購入したパンとカップスープ。
蓋がパンパンに膨らんでいるから、いかに高い場所にあるかが分かるだろう。
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鍋でお湯を沸かし、コーヒーとスープをつくり、フライパンの上にパンを載せる。
本当はトースターつくれる網があると良かったんだけど、仕方なし。
そしてレーズントーストをフライパンで焼くとレーズンが焦げ付くからダメね。
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今日は割と余裕のスケジュールなので、ダラダラとスローペースで身支度。
それでも8時くらいには荷物も積み込み、出発。
キャンプ場から、さほど遠くない野麦峠を目指す。
野麦峠って久しぶりに口にしたけど、令和を生きる皆はどれほど知ってるんだろう?
飛騨地方の農家の娘たちが、長野県の製糸工場へ出稼ぎに行くんだけど、劣悪な労働環境で女工たちが次々と死んでいく悲惨な姿を描いたノンフィクションで映画やドラマにもなった。
で、その時に通った道が野麦峠で、詳しいことは分からないけど、雪中行軍で長野を目指す。
小学校の辺りにTVドラマ化されたから、名前だけは憶えていたんだと思う。
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野麦峠を超えた辺りから、だんだんと天候が悪化。
飛騨に抜けて「道の駅 アルプ飛騨古川」あたりに着いた頃には、レインウェア無しでは厳しい状況に。
雨はどんどんと激しくなり、国道360号線の天生峠では、狭いヘアピンが何度も続き、視界不良、路面はウェット、と厳しいコンディション。
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重い荷物を積んで走るバイクには不利すぎる条件。
こういう時こそ、基本にかえり、ニーグリップと上半身の脱力。
ヘアピンではクリップポイントを深めにとって、出口で膨らまないようにライン取り。
おかげで、適当に走ってくる対向車を何度もかわすことが出来た。
こっちが気をつけて走っても、公道では相手がいるからね。
白川郷
峠道を抜けた頃、雨足も弱まり、ようやく今日の目的地のひとつ、白川郷に到着。
名前は知らなくても、鋭角なかやぶき屋根の家屋、合掌造りの集落、といえばピンとくるでしょう。
何年か前、ここから少し離れた五箇山は行ったことがあるが、白川郷はさらに観光地化が進んでいる。
さすがは世界遺産。
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川を渡った向こう側が土産物屋、飲食店が立ち並ぶ。
もはやテーマパーク状態だけど、こういう楽しそうなところから歴史や文化に触れて、
せっかくなので、美味しそうなモノを食べることに。
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散歩しながら、美味そうな店を物色。
見つけたのが、お食事処いろり というお店。
せっかくなので、メニューの中でもフラッグシップ的な定食、飛騨牛朴葉みそ焼定食を食べてみる。
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ニジマスの甘露煮などが付く。
ご飯はおかわり自由なので、即、おかわりしました(笑)。
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朴葉みその上に飛騨牛が…贅沢なんだけど、あと1枚欲しかった(笑)。
贅沢な昼飯を堪能して、外に出る頃には天候も回復。
おそらく、このまま雨は降らないんじゃないだろうか?
白川郷から能登半島を目指して富山県へ向かう途中、五箇山を通り過ぎる。
ここも白川郷と同じように合掌造りの家屋があるけど、ちょっと雰囲気が違う。
実は数年前、訪れたことがあるので、その時の写真を載せておこう。
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人々の暮らしが垣間見えるのが、白川郷と違うところ。
個人的には、こちらの方が好きだったりする。
時間があるなら、両方訪れてみては如何でしょう?
ちなみに、何で五箇山へ来たことがあるのかと言うと、ちょっと前まで少年少女たちのスポーツクライミングの大会が開催されていて、何度も引率に来ていたのだ。
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この画を撮ってみたかったんで、立ち寄ってみたという…(笑)。
ホントに懐かしい。
能登半島へ
こから輪島市へ一直線に向かうなら、高速道路を使えば2時間くらいで着くのだが、それだと味気ない。
海沿いルートを走る時の鉄則、左手に海を見ながら目的地へ向かう。
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と、ここでまたも寄り道。
「伝説のモーゼパーク」!?
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昨年も青森県で似たような施設がありましたね(笑)。
キリストの墓とか…別に狙ってこういう施設を訪問してるわけじゃないよ。
たまたま、選んだ先にあっただけでして…気になる人は、いろいろ調べてみて下さい。
本当なら、上に何かしらあるんでしょうけど、暑くて上まで行く気力は無く…断念。
モーゼには「もうしわけない、もう無理」と謝っておきました。
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気を取り直して、輪島市へ。
海沿いの道が気持ち良い。
そういえば、SSTRで有名な千里浜なぎさドライブウェイも、この辺り。
せっかくなので、一度走ってみようじゃないか、と海へ行こうとしたら…
カランコロン!!
まさにそんな音が背後で響いた。
え?缶コーヒーなんか買ってないぞ!?
と、振り返ったら、何とマフラーが転がっているじゃないの!
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どういうこと!?
慌ててバイクを道に寄せて、熱々のマフラーをどうにか拾いあげる。
すると、ステーが破断している!
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外れた場所が大通りから引っ込んだ住宅街でラッキーだった。
これがメインだったら、えらいことになっていた。
マフラーが冷えるのを待って荷物に括り付け、海沿いルートはあきらめ、最短ルートで輪島へ向かう。
漁師の宿 城兼
本当にこっちなの?とGoogleナビを疑いながら、峠道を走る。
残暑厳しい9月とはいえ、日が落ちる時間は確実に早まっている。
5時を回る頃には、夕闇が近づいてきた。
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そして、やっと目的地、漁師の宿 城兼(しろがね)に到着。
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10数年以上の付き合いながら、初めましてという(笑)。
初めましてなのに、トラブル抱えての訪問…恥ずかしいったらありゃしない!!
ワタクシのことはさておき、こちらの宿の紹介を…
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旅館は海の真ん前、海まで数メートルという距離。
海のすぐそばまで降りられる階段まであって、ベンチに腰掛けながら海を眺めることも可能。
部屋はこんな感じの日本海ビュー!
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今日も今日とて朝から夕方まで走り倒した挙句、雨と汗と涙に濡れたので、お風呂を頂く。
お風呂は少し小さいけど、これまた見事な日本海ビュー。
疲れた身体をほぐしながら、ボンヤリ海を眺める。
そして、夕食。
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美味しそうでしょう!?
WEBサイトに掲載されている通りの内容です。
「食い切れるだろうか?」と心配になったけど、全部食べたうえ、おひつを空っぽに(笑)。
50歳を過ぎても、胃袋は丈夫!
そして、晩飯を食べ終わった頃、城兼のオーナーとバイク談義。
昔みたいに、背中を丸めてクリッピングポイントの奥を睨みつけるようなライディングは出来なくなる一方で、お互い、いつまでバイクに乗れるのか、残り時間を気にするようにはなってきたけど…
旧いバイクの良いところは、どこまで行っても「未完成」。
方向性によっても手をかけるところは違ってくるし、誰かと同じようにいじってみても、違う結果になるから面白い。
正しい例えになるか分からないけど、梅の実がなる頃、おっかさんたち、なかにはおっさんも、梅干づくりに勤しんで「今年はうまくいった」とか「誰それの家で漬けたのは、美味かった」とか。
旧いバイクいじりには、同じようなメンタリティーがあった気がする。
けど、時代が進むにつれて、純正部品はどんどん欠品、バイクをいじるにもお金がかかるようになったどころか、50万円もあればベース車が手に入ったのに、いまや書付きフレームが新車みたいな価格で取引されている。
自分がそうだったように、旧いバイクを手に入れて、先輩たち先駆者たちに教わりながら、コツコツとバイクを組み上げていった時代は過去のものになってしまった。
バイク業界を俯瞰して論じれば、新しいバイクを買ってメーカーや業界の収益を上げるのが正解なのかもしれないけど、欧米のメーカーでは絶版車両の純正部品供給を続けているところもある。
もしかしたら、いま、我々の世代が、そうやって旧いバイクで遊ぶ最後の世代なのかもしれないね。
そんな話をしながら、夜が更けていった。
本日の走行距離
高ソメキャンプ場→白川郷→輪島市
338km
DAY3へ続く