2023年09月23日 Z1RのレギュレーターをMOSFETからオープンタイプに変更してみる(追記あり)

Z1R-II

MOSFETレギュレーターを搭載したのが2013年10月。
もう10年の月日が流れたのか…

いまのところ、MOSFETレギュレーターでも不具合は無い。
リチウムイオンバッテリーも絶好調。

心配なのは、ACジェネレーター、ステーターコイル、アーマチュアと呼ぶ人もいるか…
とにかく、あのコイルの健康状態というか寿命は気にしている。

因果関係、どこまでエビデンス(物証)があるか分からない。
けど、MOSFETレギュレーターレクチファイアに換えたら
「ステーターコイルが焼けた」
という体験談がネット上に散見する。

MOSFETレギュレータを搭載しても、必ずトラブルになるとは限らない。
現に10年間、我が家のZ1Rはノントラブルだ。
でも、焼けただれたコイルの画像を見ると、思わず「明日は我が身」と背筋が凍る。

MOSFETタイプ、オープンタイプそれぞれの特徴

実は仕事の立場を利用してレギュレーターレクチファイアのメーカー、新電元工業株式会社とやり取りをしたことがある(前にも書いたハズ)。
以下、同社電装第一営業部とのやり取りを抜粋。

まず、MOSFETのレギュレーターが発熱しない理由については、こういう回答。
「MOSFET式レギュレーター・レクチファイアの損失が少ないのは、AC発電機出力の整流(Rectification)時と、バッテリ電圧制御(Regulate)時のパワー半導体(MOSFET、ショットキ―バリアダイオード)の損失が、従来のサイリスタ式レギュレーター・レクチファイア(ダイオード、サイリスタ)に比べて少ないからです」

サイリスタ式のレギュレーターが発熱する理由として「使用中に比較的熱を帯びるのは、あらかじめ設定されたバッテリーの充電許容量を超えた電力を短絡させるため熱変換しているという表現が正しい のか、変換効率の都合上、熱損失となっている」という解釈で間違っていない。

旧いタイプのレギュレーターレクチファイアはACジェネレーターへの負担が少なく、MOSFET型は戻す量が多いのでACジェネレーターへの負担が比較的多い、という解釈は間違っているか?
という質問には「AC発電機への負担は、ほぼ同じ(誤差範囲)です」と意外な回答。

ACジェネレーター側から見た場合、負担が少ないのはオープンタイプのレギュレーターレクチファイアという認識は正しい?
「熱的な負担は、オープンタイプのレギュレーターレクチファイアの方が少ないです」
ただし、MOSFFET型レギュレーターが物理的に余剰電力をコイルに戻す、というのは誤解みたい。

H2をはじめ、フラッグシップがMOSFETからオープンタイプに切り替えている印象が強いのだが、その点についてはどうなんだろう?

「世界のオートバイメーカーの大型(フラッグシップ) モデルに、オープン式レギュレータ(REG.RECT.)が多く採用され始めたという事は有りません。
オープン式レギュレータは、レギュレート時に発電機のロスが少ないのが魅力ですが、100馬力(75kW)以上のエンジン出量に対して、発電機のロスは 最大で0.5kW程度と誤差程度で有り、オートバイメーカーには発熱が少ない ショート式レギュレータの方が魅力的な様です。
尚、昨今の古いオートバイのブームで、古いオートバイをレストアする際に 発電機の発熱が少ないオープン式レギュレータの方が、発電機の寿命が延びる という事で、ショート式からオープン式レギュレータに変更するマニアの ユーザーが多くいらっしゃる様です」

なるほど、ステーターコイルの保護という視点に立つなら、レギュレーターをMOSFETからオープンタイプに変更するのは間違った選択じゃない、ということか。

オープンタイプレギュレーターの部品調達

じゃあ、どれを買ったらいいの?
ということになるんだけど、H2のレギュレーターが間違いないんじゃない?
純正部品の価格上昇が著しい昨今にあって20,000円以下で購入できる!
すごい!酒代を節約したら買えない額じゃないでしょう。

こないだトム・クルーズが飛行機の映画で乗ってたスーパーチャージャーつきのバイク、あれについてるのがコレ。

巨大なヒートシンクがついている見た目はMOSFETと同じ。

実際大きいのですよ。

既存のパーツと比べてもご覧の通り。
ボルトのピッチも全然違う。

実走してみる

レギュレーターレクチファイアを変更する前に、そもそもコイルの調子はどうなのか。
抵抗値は3系統とも0.8Ω。
4000rpmでの交流出力について。
一応50V越えしてる組み合わせもあれば、やや到達していないのもある。
当時ものだから、そんなものか、と自分に言い聞かせる(笑)。
4000rpmって、住宅街ではなかなかハードルが高いのよね。

アイドリング時の発電量測定。
MOSFETだとこのくらい…だけど、エンジンかけ始めはこんなものだったりする。

次にオープンタイプをつけてみる。

2000rpmの写真しかないけど、MOSFETもこんなものだから新鮮な驚きはない。
別に発電量が大きくなるわけじゃないので、まあいいか。

取り付けピッチが違うので、新しいボルト穴を穿孔。

防水カプラはMOSFETと共通なので、そんなに加工が大変なわけではない。
新規取付の方は、カプラと端子を新調しましょう。

いろいろと創意工夫のうえ撮影(笑)。
3000rpmあたりで14.4V。レギュレート性能は良いのでは?

ヘッドライト点灯してのアイドリングで14.0V。

問題の発熱量。
ちゃんとしたセンサーもあるんだけど、出すのが面倒くさかったので、体温計を使用。
ただ、センサーを使うまでもなく、触ってみると明らかに「熱い!」という印象。
触れないほどの熱さではない。
だけど、MOSFETタイプのような静けさというか、冷たさは無い。

余剰電力を巨大なヒートシンクから解放しているのは、ファイブスター物語に登場する『ゴティックメード』と同じなのだろう。

10分ほど街乗りしてきた程度でもこんなもの。
長距離走行してみたら、もっと熱くなるかも。

結局、余剰電力が生み出す熱をステーターコイルが負担するか、レギュレーター側が負担するかの違いなんだと思う。
どっちかの寿命が減るのであれば、交換が容易なレギュレーターの方にしわ寄せが行った方が、まだ良い気がする。

中古で10年ノントラブルだったのだから、新品のレギュレーターだったらどこまでもつか…
もう10年くらいはもってほしいね。

追記:ちゃんと計測してみましょう

家のおつかいでバイク便をすることに。
せっかくなので温度計つきのテスターを引っ張り出した。

冷間時の温度は気温とだいたい同じ。
やっと涼しくなってきました(できれば一週間前が、この天候だったらよかったのに)。

週末渋滞の中、数キロ走っただけで40℃オーバー。

3000rpmくらいで走り、ストップアンドゴーを繰り返していたら50℃オーバー。

みるみるうちに温度が上昇。

バイパスをぶん回して走ったら60℃オーバー。
瞬間的には65℃まで上昇したので、もっと暑い時であれば、もっと上がるのだろうか?
だとすると、取り付け位置も考慮しないとイカンでしょうな。

というわけで、オープンタイプのレギュレーターが何処まで熱くなるかの追記でした。