2000年05月03日 Z1RのエンジンOH

Z1R-II

1999年の春に新パーツと換装して1年ちょいでエンジンを開けるとは思いも寄らなかった。
「何だそれ、全然ダメじゃん」とか言われそうだが、その間5000キロ級のツーリングを2回、サーキット全開走行、その他メチャメチャな走行数知れず…距離にして2万キロ前後は走っている。

その間、トラブルらしいトラブルには見舞われなかった。
旧いバイクの割には元気だったのではないだろうか。

一応現時点でメーターは68971.5kmキロをさしている。
といっても、日本に持ち帰った時点で中古メーターに交換している。
故に、この数字は当てにならない。

とりあえず外からでは判断できないので、ヘッドカバーを開けてみる。
すると、カムシャフトを固定するホルダーのボルトが何本か浮いていた。
前回、ネジが折れたり、トルクがかからなかったためにヘリサート加工した部分である。
結構気合を入れた部分なのだが、2万キロくらいしか持たなかったのかと思うと、ちょっとガッカリ。

これら浮いてしまったボルトが、振動によりヘッドカバーの天井を叩いたのだろうか。
結論を急いではいけない。見えない部分の不具合だけに、トライ&エラーが必要だ。

次にタペットクリアランスを測定。8枚のシムは、ほとんどが許容範囲を超えていた
念には念を入れ、カム山も測定する。
といってもよっぽどブン回してばっかりいなけりゃ、カム山がへたることはない。
酷使されるパーツってんで、元々頑丈に作られているし。
カム山がへたるくらいなら、別のパーツに不具合が生じるだろう。
ま、一応やるべきことはやっておくというわけだ。

カム山はOK。
見た限りではメタルも問題なし。
タペットを調整してエンジンをかけてみるが、やはり音がする。
どうやらカムチェーンが伸びているようだ(一応バルブもチェックしたが、こちらは今の段階では問題なし。とりあえずよかった)。

というわけで、カムチェーンを交換することに。モノの本によればZはカムチェーンとその関連部品が弱点らしく、パーツカタログなどを読むと「対策」とか「強化」の冠がついたパーツが出回っている。

リフト量の大きいカムを使用しているわけじゃないので、ノーマルでも十分とも思う。
少なくとも、20年前より材質の面で進歩しているだろうし。
んでも、強度の高い部品を入れればそれだけ寿命が伸びるんじゃないかと思うのが人情、あるいは素人考え。

どうかと思ってZに乗ってる知人に相談してみる。
知人といっても、このサイトに遊びに来てくれた人たちだ。
こんな時、みんなオレなんかよりも知識&経験があるので大変ありがたい。

んで、今回選んだのがTSUBAKI製のAPEカムチェーン。
ノーマルと同じ形状なので、しっくりとフィットする。
いわゆる強化型カムチェーンをつけると、ゴム製テンショナーアイドラーを磨耗させたり、ぶっ壊すことになる。
こいつも強化型というか、対策された社外品を入れることでOKなのだが、さらなる出費を強いられる。
今回は上記のカムチェーンと純正アイドラーへの交換で手を打つことにする。

せっかく下まで開けたのだから…と、スタッドボルトやらメタルやらピストンリングを交換することに。
結局、シム以外のバルブ周りとピストンの他は全て新品に換装。
ここまでくると、OHと変わらないかも知れない。

エンジン分解の手順は前回とほぼ同じ。
マニュアルや星の数ほど出版されている雑誌やムックなどに載っている通りのプロセスが、目の前で行われてゆく。雑誌なんかの解説を見ると簡単そうに見えるが、ボルトを外すにも順番があるので結構気を遣う作業だ。

といいつつも、オレが神経をすり減らす必要はない。作業を行うのは、またMOTO GARAGE WINDSの鎌田代表(若シャチョー)。
鎌田社長がテキパキとパーツを外す傍ら、オレは「ふーん」とか「へー」とか言いながら眺めているだけ。
エラそうに眺めていると怒られそうなので、こびりついた古いガスケットを剥がしたり、ピストンに付着したカーボンをスクレイパーで削り落とす。

地味で目立たない作業だが、しっかりとやっておきたいところ。
欲を言えば、ツルツルのピカピカに仕上げてやりたいが、オレは無欲な人間なので適当に終わらせる。
そしたら、社長が「ちゃんとやろうよ、タケダさん」と怒られたので、となりで作業を眺めていたお客さんに「ピストン触ったことある?これ、一個で250ccだぜ」とかいって磨いてもらう。

ちなみに今回の犠牲者は「魔太郎がくる!」の主人公そっくりの小関君。普段は控え目で物静かな青年なのだが、アルコールでもう一人の自分が姿を現す危険な男だ。この時はシラフだったので、一生懸命ピストンを磨いてくれた。
ありがとう、小関君。今度お礼にウチの車のトランクを見せてあげるね(内輪ネタ)。

腰下までバラしたら、いよいよ今回の目玉、カムチェーンをクランクに通す。写真で見てもらえば分かるよう、半コマから1コマほどずれている。前回のOHで換えておけば、余計な出費にならずに済んだという…
どの本にも書いてあるが、やるなら下から上まで徹底的にやった方がいい。

例えば、全体的にヘタってきているのに、一部だけを直しても他の弱い部分に負荷がかかり、そこから不具合が生じてしまう。厳密に言うと、シリンダーヘッド、シリンダー、クランクケース、クランク(コンロッド)以外は、何から何まで新品に交換するのが理想的である(それこそバルブシートも)。

もちろん、それぞれ懐の都合もあるだろう。けど、仮に30万円が財布の限界だとして、ショップのヒトから「完璧に仕上げるなら35万円くらいになるよ」と言われるとする。
そしたら、少しやりくりして5万円を上乗せしろと…その5万をケチったために、後で10万円とか15万円くらいの修理代がかかることだって十分あり得る。

5万がでかいってんなら、2万円でもいい。
その2万円を足しただけで、マシンの完成度は全然違ってくる。30万円に対する2万円は大したことないと思われそうだが、2万円で交換できるパーツは、少なくない。
以下は今回交換したパーツの内訳である。

  パーツ名   単価×個数価格   備考
NGK BR8ESプラグ\450×4\1800
TSUBAKI製カムチェーン\7900×1\7900124丁
カムテンショナーASSY\4590×1\4590ゼファー750用。
ピストンピンサークリップ\40×4\160
バッテリー\11800×1\11800
カムチェーンアイドラー\7220×2\14440 
ピストンリングセット\3980×4¥15920 
シリンダースタッドボルト A\370×4\1480 
シリンダースタッドボルト B\370×4\1480 
シリンダースタッドボルト C\430×4\1720 
シリンダーヘッドナットワッシャーA\220×4\880 
シリンダーヘッドナットワッシャーB\90×8\720 
カムメタル\550×16\8800 
チェーンガイド\7220\7220 
シリンダーサイドフランジボルト\160×2\320 
ガスケットセット\10000×1\10000ロイヤルインダストリー製
オイルフィルター\800×1\800 
シム\550×8\4400
シリンダーヘッドナット\330×12\3960 
合計\98390消費税別

前にも書いた通り、バルブ周りとピストン以外全部新品である。
前回のOHにも価格表を載せているので、ピストン4個とバルブ周りの部品代を足せば、OHの目安になる…表に載ってる部品だけで16万円くらいね。
バルブガイドの打ち換えまで行えば、一気に工賃が跳ね上がる。

あとはエンジンの状態次第。
状態がよければ、サクサクと新しいパーツをあるべき場所に組み付ければいいだけ。
しかし、オレのマシンのようにヘリサートが入ったり面研を行えば、また違ってくるはずだ。

オレのマシンに話を戻そう。
表を見てもらえれば分かるが、テンショナーをZ1R用ではなくゼファー750用を選んでみた。
完全ボルトオンである。
コレは、お隣の県に住む750FXライダーのわたなべさんから教えていただいたネタ(?)である。

別にZ1R用のテンショナーが絶版になったわけではない。
わたなべさんの受け売りだが「高価な社外品を入れなくても、現行車のパーツで十分対応できる場合もある」という可能性みたいなものを試してみたかったのだ。
実際、調子よく機能しているので、お勧めパーツかもしれない。

組み上げて発見したのが、4番シリンダーの不具合。
新品のリング(オイルリング)を組むと、必ずオイル上がりの症状が出る。
別にサイズがおかしいわけではない。
で、今まで使用していたモノを組むとピタリと止まる。
直接シリンダー壁に当たるパーツではないからいいものの、どうにもこうにも原因不明。

「4番だけボア径が広がってる…」とも思うが、ピストンリングはピタリと決まってるし…実は前回もアヤがついた4番シリンダー。
結局、前のリングを組んで処理したが…いまいち不思議だ。
「これぞ」という意見のある方は、メールなりBBSなりに書き込んでくだされ。

ちなみに、オレのマシンの現象とは別として、4番シリンダーにケチがつくケースは少なくないという。
あるバイク屋では「スタンド立てたまま長期間のアイドリングを行うと、傾き加減からオイルが十分に行き渡らず、それが原因で4番だけおかしくなる」と言っていた。

ホントかよ~。
オイルに関しては、ウイリーまでしてテストを重ねたカワサキだぜ(有名な話)。
そんなお粗末な話なんてあるかいな…

可動パーツの多くを新品にしたので、当然慣らし運転が必要。
と、その前に例によってスーパーゾイルを入れてやる。
オレごときの経験では、使用前・使用後の効果は分からないが、入れて悪いものでもないだろう。
150kmほど慣らし運転をして、すぐさまオイル交換。
何とももったいない話だが、こればかりは仕方ない。

完成したエンジンは、さすがにスムース。
今までは、良くも悪くも「昔のバイクだなあ」という感じだったが、現行車に勝るとも劣らないほどの滑らかさ。
スロットルを捻り、ギアを叩き込んでいってもスルスルっとスピードが乗ってくる。
特に、急な坂道でラフにスロットルを開いても、ストレスなく回ってくれる。

多分、いままでの最高のコンディションではないだろうか。
よく雑誌で「Zのエンジンをチューンする人は、完調のノーマルエンジンの状態を知ってからの方がいい」とおっしゃるショップの方が多いが、まさにその通り。
まずは、ノーマルでの仕上がりを体感した方がいいだろうね。
まあ、趣味のものだから、絶対にそうしろとは言えないが…

とはいっても、限りなくカタログスペックに近づけたコンディションのエンジンを知ってからカスタムしても遅くはないだろう。
「雑誌でみんなやってるから…」ではなく、「ノーマルで限界を感じたから…」という方が、より明確なプランも打ち出せると思う。
結果的に『定番カスタム』となったとしても、だ。

なーんてエラそうなことを言っているが、他にも課題は多いんだよな。
ガケから落っこちてフレームはひん曲がってるだろうし、ハーネスはボロボロだし…まあ外装に関してはSEAZさんから譲ってもらったツヤツヤのフルセット、わたなべさんから提供されたピカピカのマフラーがあるんだけど…ただ、今の状態で着けたら申し訳ないのヨ。

そこいら辺は、21世紀になってからということで…
それにしても、今回初めてバイクのホームページらしいこと書いたような気がする…

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