タイトルにもある通り、Kawasaki Z1R(オンロードバイク、1000cc、旧車)で青森県の白神ラインを走破…これこそが、今回のツーリング最大の目的である。
白神ラインを走るために純正ホイールをチューブレスにしたり、DT125Rで何度も林道を走り、無茶な長距離ライディングを繰り返してきたのだ。
すべては、この時のために…!
白神ラインは単なる峠のワインディングロードではない。
白神山地を東西に抜ける未舗装道路で、しかも峠がいくつもある。
つまり、登って下りてを何本も繰り返さなければならない。
その距離、およそ42km。
直線距離でいえば、東京駅から青梅駅あたり。
そんなロングダートの峠道をZ1Rで越える。
ハッキリ言って無謀以外の何モノでもない。
どれほど調べても、そんな旧いバイク、しかもオンロードで白神ラインを越えた記録は無かった。
すると、また何十年かぶりに悪い考えが頭をよぎるわけである。
あの時も「Z1Rでオーストラリアを一周したライダーはいないだろう」ってんで、無謀な冒険旅行を敢行したのだ。
そんなの作ろうと思えば何でもできるんだけどね(笑)。
東北有数のダートロードをZ1Rで制覇せずして何を制覇するのか!?
謎のモチベーションと共に白神ラインを目指す。
と、その前に。
昨日、訪れたかった入道崎へ立ち寄る。
ここから海に沈む夕陽を観たかったのだ。
到着が遅かったのと、夕食時間、そして温泉施設の閉店時間が1時間早かったので断念。
とはいえ朝の入道崎も素晴らしかった。
緑の丘陵地帯から、突如現れる荒々しい岩の海岸線は男鹿半島の特徴だ。
本当なら、しばらく眺めていたかったが、それでもスタートが遅れていたので先を急ぐ。
男鹿半島からは101号線と県道42号線を使いながら北上する。
途中、大潟村あたりでは、東北とは思えない、真っ直ぐの弾丸道路がお目見え。
本当なら、秋田自動車道の琴丘森岳へ向かうと5km以上の直線を走れるのだが、遠回りになるので八竜から高速へ。
能代東までショートカットしたら、海岸線を北上。
途中、五能線の列車が登場。
鉄道ファンではないのに、思わずパチリ。
いつの間にか青森県に突入、深浦町まで到着したら、いよいよ白神ラインのスタート。
白神ラインは県道28号線(岩崎西目屋弘前線)が正式名称。
101号線にも「白神ライン通行可」と電光掲示板が出ていたので観光客が良く行くルートなのだろう。
が、やはりダートロードのせいか「ようこそ白神ラインへ!」と大々的に歓迎する雰囲気は無い。
むしろ、何度も「整備中の道路だから運転に気をつけてね」といった趣旨の看板が。
101号線から5kmほど東に入ったら、いよいよ42kmのダートロードに突入。
開始時刻は10:45。
とはいえ、道路そのものの凹凸は少なく、舗装されていない砂利の駐車場がそのまま道路になったような雰囲気。
宮城県の泉ヶ岳周辺にあるような、道路が大きくえぐれた林道よりは走りやすい。
ニーグリップで車体を安定させつつ、上半身とハンドルを握る腕は脱力させる。
これをやらないと車体が振られたり、大きな石やギャップを乗り越える時、衝撃を吸収しきれずタイヤをパンクさせたり、ホイールを曲げてしまう。
ガツンと衝撃がくる、ということは、それが出来ていない証拠。
登りは案外簡単なのだが、問題は下り道。
ただでさえフロント荷重となるので、ハンドルをつい押さえ込んでしまう。
減速はエンブレとリアブレーキを中心にしつつ、フロントは荷重が抜けない程度に。
オフ車なら、多少ラフに扱っても、車体がある程度自発的に動いてくれるが、Zではそうもいかない。
特にタイヤがミシュランのロードタイヤだから、乗り手が積極的にコントロールしてやらないと言うことを聞かなくなる。
いったい何本の峠を登り降りすれば、ゴールにたどり着くのだろう。
スマホは圏外だから、時折出てくる西目屋村まで何キロ、弘前まで何キロ、という看板だけが頼りだ。
体感的には、もう何kmも走っているように思えるのだが、看板が示す距離はたった数km(笑)。
そりゃそうだ。
パーシャルに近い開度で走っているうえ、ヘアピンの連続なのだから、進んでいるように見えて進んでいない。
おまけに、どこも坂道ばかりで、休めるところはない。
時々、ほんの数十メートルだけ現れる舗装道にバイクを寄せる。
これが唯一の休憩。
だんだんと心が折れそうになってくるが、マシンを停めてプラグの火を落とし、ヘルメットを脱いで遠くを眺めると、風の音、鳥の鳴き声、おそらくこちらを見つけたサルたちが警戒して吠える声…
人工の音がまったく聴こえない世界が拡がる。
歯を食いしばってダートロードを走ったからこそ得られる、至福の瞬間だ。
さらにここは白神山地の深い山奥。
目の前に拡がるブナの木々は、この世の果てまで続いているような錯覚すら感じる。
後半の目標でもある津軽峠まで到着した時には、スタートしてから2時間が過ぎようとしていた。
津軽峠のすぐそばには「マザーツリー」と呼ばれる樹齢400年のブナの古木があるのだが、すんません、もう疲弊しきってそこまで行く気力がなかった(笑)。
一応、徒歩5分くらいで行けるので、次回は弘前方面から来て、拝んでおきます(次回もやる気あるのか)。
津軽峠までは何と路線バスも出ているうえ、そこそこ走りやすいので、ここまでやってくる一般車両も多そうである。
駐車場では、近くに住むお年寄りたちが「(コロナ禍なので)少しでも空気がきれいなところにきて、飯を食ってるんだよ」と笑っていた。
聞けば、ふもとまでは30分足らずらしい。
最後の気力を振り絞って下山。
ここで気を抜いたらアウトだと思いつつ、集中力が切れたのか、泥にとらわれてグリップを失う。
どうにか踏ん張って耐えたが、ブーツの左足は泥だらけになった(笑)。
おまけに最後の方でウインカーレンズが振動で吹き飛ぶというトラブル発生。
しかし、どうにか白神ラインのゴール、アクアグリーンビレッジANMONまで到着。
本当は昼飯を食べたかったのだが、コロナ禍のせいでレストランはクローズ。
仕方ないので、先に進み、道の駅・津軽白神ビーチにしめやでラーメンを食べる。
本来であれば、西目屋村の津軽白神湖から県道317号線で南下、能代に戻るような形で秋田へ行き、八幡平を経由して帰宅したかったのだが、それだけでも6時間以上のルート。
すでに14:00を回っているので今回は諦めて、弘前市郊外のアップルロードを走りながら大鰐弘前を目指す。
大鰐弘前を発ったのは15:00。
昔、フルスロットルで帰宅した時は3時間を切ったが、もはやそんな無茶は出来ない(笑)。
1時間ごとに休憩を入れながら東北道を南下。
いつの間にか、すっかり日が暮れ、東の空には大きな月が光っていた。
一泊二日の短い旅だったが、20年ぶりの邂逅、ロング林道チャレンジなど、内容は濃密だった。
旅というより、間違いなく冒険であり、この20年近く続けてきた「空冷Zとの戦い」のベストバウトに入るツーリングだった。
これを読んだZ乗りたちよ、Zでも林道は走れるし、林道にはアスファルトにない魅力が沢山ある!
ぜひ走ってみて欲しい…自己責任で(笑)。
次の冒険は何年後だろう…?
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