2022年05月13日 Z1Rのリアブレーキ修理 | 空冷Zとの戦い Kawasaki Z1R ブログ

2022年05月13日 Z1Rのリアブレーキ修理

Z1R-II

実はちょっと前に気づいていたリアブレーキマスターからのフルード漏れ。
ゴム製のブーツも、風化しているレベル。
本当なら、社外品なり現行車両なり、新しいパーツにアップデートした方がいい。
特にブレーキは、クルマもバイクもエンジン以上に大事なパーツ。

とある中古車販売店で言われて「なるほど」と思ったのが
『優秀なクルマてのは、エンジンがかかるとか、動くとかじゃなくて、停まりたい時に停まれるクルマですよ』という言葉。

バイクも同じでしょう。
というわけで、まずは補修用のパーツが売っているかチェック。
パーツリストを見る限り、肝心なところはだいたいそろうみたい。
ただ、高いのはマスターシリンダー内のピストン。
4000円近くしますな(涙)。
漏れの原因となるのはピストンのパッキンだろうから、ここを調達しないことにはどうしようもない。

ゴム製のブーツもぶっ壊れている…
とりあえず、順番に外していく。
まずは、ブレーキペダルとロッドを繋いでるコの字のところからピンを抜く。
マスターシリンダーとロッドは、カップにはまっているだけなので簡単に外れる。

次にマスターシリンダーを外す。
写真は撮れなかったけど、最初にリザーバータンクとバンジョーボルトを外してしまう。
先にフレームマウント用のボルトを抜くと、しっかりはまったバンジョーボルトは外れないので。
バンジョーボルトはラップなどでくるんで、ブレーキフルードが塗装面にくっつかないようにする。
リザーバータンクも同様なので、逆さにしてどこかへ安置した方がいい。

写真は既にリテーナー(金属の棒みたいなの。メーカーによって形は違う)を外したところだが、これがなかなか強情。
うまいことひっかける工具が必要。

大変だったのが、ピストンをシリンダーから外れないようにするストッパー。
ちょっと大きめのワッシャーみたいなパーツね。
これが、なかなか外れない。
写真で見てもらえればわかるように、この辺一帯は、サビで覆われている。
すっかり固着してしまったストッパーを叩いたり、焙ったり、引っ張ったりして、どうにか分解。

外れたピストン。
ロッドを包むカップが半分欠損しているが、致命傷ではなさそう。
けど、ここが一番なので、新品に交換。

最近、目が悪くなったせいか、違うように見える…
使い古されたボケで申し訳ないけど、愕然。
パーツリストに書いてある番号通りに頼んだというのに…

これがパーツリスト。

これがサービスマニュアル。
もしかして、我が家のZ1Rに着いているのは、なにか他の車種から引っ張ってきたもの??
いったい、どの車種…?

いや、ちょっと待て。

パーツリストのマスターシリンダー、リザーバータンクはシリンダーと一体型だが、サービスマニュアルは別体式…これは、パーツリストが間違っているんじゃない?
こういう場合は、最新のウェブサイトを確認…
https://www.kawasaki.com/en-us/owner-center/parts/144330/1980/KZ1000-D3?cm_re=PARTSLISTING--FINDDIAGRAM:1980Z1R--PARTBUCKET

によれば、やっぱり別体式が正しいみたい…パーツリストはコピーだからな…これ見て違うのが来ても文句は言えないのかもしれないけど、ヒドイ…!
4000円もしたのに!何の役にも立たないなんて!!

何とかしてよKawasakiさん!!

Mk-2とかの5/8の一体式マスターシリンダーにはフィットするんだろうか?
誰か半額くらいで買ってくんないかな(笑)?

ショックで打ちひしがれてしまいそうな心を落ち着かせようと、まずは部品の清掃。

「さびとりつや之助」という、やや人をくったような商品。
こいつをロッドにつけて…浸けて清掃開始。

たっぷりと着けたら、真鍮ブラシでゲシゲシとブラッシング。

頑張ってそこそこキレイにした!
と、えらそうに言っているけど、インパクトドライバーの先に金属タワシつけて磨いたので、実はあっという間。

注文ミスしたピストン、新品なので使えないだろうか、とシリンダーの中に入れてみる。
内側ではフィットしているが、ロッドのカップ径が大き過ぎるので、ストッパーが絶対にはまらないときたもんだ(涙)。
図にすると、こんな感じ。

マスターシリンダーはフレームマウントされ、ピストンはペダル+ロッドが常に下から突き上げているので、ピストンが外れる、ということはないだろうし、何となくのストローク量も既存品と同じくらいな気がする…ので、組みつけてみる。

ペダルを踏んだら、それなりにストロークしている感じ。
いけるんじゃない?と、ブレーキフルードを入れてエア抜きしてみる。
ところが、待てど暮らせど、エアが抜けない。
ブレーキフルード、そんなに高い頻度で交換しないので、ど下手クソになってしまった?

フルードをさんざん入れてシリンジ(注射器)で吸い出し、フルードをリザーバータンクから注いで…を繰り返しても、どんどん気泡が出て来る。
これ、もしかして、ピストンのはまり具合が浅いため、シリンダーの下からエアを吸ってるんじゃないの?

しょうがないので、前からついていたピストンをつけてみる。
カップが欠けてるのはどうしようもないけど、サビは落としたし、綺麗になったでしょ?

再度フルードを入れて、ペダルを踏み、エアを抜く。
すると、数回でエアが抜け切って、カチっとしたリアクション。
さっきは手で回してもスカスカだったけど、今度はエンジンをかけて回してやってもしっかり停まる。
めでたし、めでたし…

ちなみに、いよいよ部品が入手できなくなったらどうするのか?
Kawasakiの現行車両のマスターシリンダーを流用する。
ショップなどの作例でも見たことがあるし、このサイトを読んでくれている方からも、情報を頂きました。
フレームマウントの取り付けピッチが同じものが多いので、純正流用するのが手っ取り早いでしょう。

おまけ

実は、時々ではあるけど、なんとこの空冷Zとの戦いを読んでくれている方々から、コメントやお便りを頂くことがあります。
なかには、随分前から読んでくださっている方もいて、本当にありがたい限りです。
で、自分では詳しく書いたつもりでも「ここはどうすればいいの?」「もっと具体的に教えて」という声を頂戴することが多くなってきました。
ノリとイキオイだけで書いてはいけないし、かつての自分のように(まあ、いまもですが)、作業工程のヒントを求めていらっしゃる方もいますので、できるだけ省略しないように書いていこうと思います。

たとえば、今回の「ブレーキフルードのエア抜き」は、やり方を覚えてしまえば、それほど難儀するものではありません。
が、やったことがない方からすれば、ブレーキは人命にかかわる大事なパーツですから、おいそれとは手が出せない箇所です。
実際、カスタムショップなんかではキャリパーのOHを含めて手掛けるのは当然、という感じですけど、本来は国交省から分解整備の認証を受けた工場じゃないと、手をつけてはいけないのです。
「プロの整備士がいるから、いいんだよ」という人もいますけど、調理師免許を持っている人が店にいても、店自体が保健所から飲食店としての許可を得なければ、調理したものをお金をもらって提供してはいけない、というのと同じ理屈ですからね。
実は、今度、そういう分野の本(電子書籍)を書こうと思ってるので、乞うご期待。

話はそれたけど、ブレーキのエア抜き。
ディスクブレーキをブレーキパッドが挟んで停めるのは、ご存知の通り、油圧が使われています。
ものすごい勢いで走る、数百キロの車体+運転者の体重をブレーキは、1~2本の指でチョンと握っただけで、ピタリと停めるスゴイ装置なわけですが、これも油圧が正常にかかるから(詳しくは、パスカルの原理を調べてみてください)。

正常に動かすためには、オイルライン…マスターシリンダーからキャリパーのピストンまで、いっさい空気が入らないようにしなければなりません。
液体は圧力がかかっても体積は変わらないけど、空気は簡単に縮んでしまいます。
オイルラインに気泡が含まれていると、踏んでも握っても手ごたえがなく、ブレーキも正常に作動しなくなります。
しかし、今回のように分解整備すれば、経路も密閉状態を失い、空気に触れることになる。
もう一度組みつけても、あちこちに気泡が出来ているので、それを除去してやらないといけません。
これがエア抜き作業。

いろいろなやり方があるけど、基本的なのは、ブレーキキャリパーのニップルを緩めた状態でマスターシリンダーに圧力をかける。
すると、キャリパーのピストンが動くのだけど、ニップルが緩んでいるので、圧力はそちらに逃げる。
オイルも漏れていくわけだけど、同時に気泡も抜けていく。
踏んだ(握った)ら、ニップルを締めて、足りなくなったフルードをリザーバータンクに注いでやる。
これを繰り返していくうちに、経路内部の気泡がなくなり、レバーやペダルにカチっと硬質な感覚が戻ってくる。
こうなれば、エア抜きは完了。

理屈は簡単だけど、作業にはエア抜き用の工具を用意した方がいい。
まずは、ニップルにとりつける透明なチューブ、流れ出たフルードを受ける容器。
フルードを垂れ流してもエア抜きは出来なくないけど、ブレーキフルードに触れた塗装は化学反応により剥がれてしまうこともあるので、そのままダラダラ流す人はいないと思う。

透明なチューブを使うのは、気泡が出ているか、停まったかを確認できるから。
で、流れ出たブレーキフルードを受け止めるのに容器が必要、というわけです。

「あんたは注射器みたいなの使ってるじゃないの!何で?」

これは、注射器を引っ張ってバキュームしているわけです。
簡単に経路内のオイルを引っ張れるし、あまり外気に触れずにフルードを回収するため、注射器の中に入ってきたオイルを再びリザーバータンクに戻せるってんで使っています。

ニップルを回す時は、普通のレンチではなく「フレアナットレンチ」が良いです。

初売りのバーゲンで買ったもの

実際にやってみると分かりますが、普通のレンチで回すと、ニップルにつけた透明チューブに引っかかって、作業中にチューブがニップルから外れてフルードを床にまいたり、車体塗装面につけるなどの惨事を引き起こします。

途中で切れ目のあるレンチを使うと、チューブをかわしてニップルを回せるので便利です。
バイクにもよりますが、8と10のコンビになってるのを1本買えば大丈夫。

あとは、上記のシリンジ(注射器)。
透明チューブ+容器と比べると作業効率が格段に向上します。

それから、もし、ブレーキフルードを車体の塗装面に付着させたら、水で洗い流せばOK。
裏を返せば、水分(湿気)と容易に結びつく性質なので、容器が空気に触れないように保管すること。