2022年06月04日 Z1R リアブレーキ換装

Z1R-II

先日OHしたリアブレーキ。

https://z1r2takeda.com/2022/05/14/rear-brake-overhaul/

しかし、マスターシリンダー内部のピストンが劣化しており、少しずつブレーキフルードが漏れてくる。
エンジンオイルの滲みなら「継ぎ足し」で乗り切ることも出来るけど、さすがにブレーキフルードはよろしくない。
塗装面を傷めるだけじゃなくて、制動装置に不具合がある、というのは大問題。
バイクや自動車などは「停まってナンボ」です。

じゃあ、何を使えばいいのか。
すでにZ1R純正ピストンは廃盤。
取り付けピッチが合えば、何でもよいでしょう、ということで現行車両の中からチョイス。
某ショップではNINJA250 (43015-0091)を推奨しているようだけど、難点がふたつ。

ひとつは、ロッドが短いため途中に高ナット(長ナット)などでロッドの長さを調整しなければならない。
やり方自体は単純なのだけど、ドンピシャのサイズで部材を調達するノウハウがない。
こういうことをサラリとやってのけるのが、ショップの技術でありノウハウである。

もうひとつは、NINJA250のパーツはヤフオク中古品でも、そこそこ高い。
5000円以上の値がついているのを見て諦めました。
新品だとASSYで15000円以下で買えるのだが、正直、そんなに出したくない(笑)。
「いや、そこは買えよ」と言われそうだけど。

NINJA250のマスターシリンダー。バックステップと取付位置の兼ね合いで、ロッドがかなり短い
NINJA250などSSのマスターシリンダーを使用する際は、こういうので延長してやる

某SNSでどうしよう、困ったな、と言ってたらフォロワーさんが
「エストレヤがいいですよ、ヤフオクでも安いですし」
と作例画像と共にアイディアをDMを送って下さった方が…!
ご自身の愛機で搭載済みなので、非常に心強い。

2000年辺りは、まだSNSもなくて、ホームページには掲示板(BBS)が併設されてて、割とそこでの交流が多かったんだけど、いまはそういうのもなくなりましたからね。
ブログのコメント欄を利用して書き込んでくれる方々もいますけど、多分、相当めんどうくさいとか、ストレスを感じながら書いてくれてるのだろうな、と思います。
いまや、どれくらいの「読者」がいるのか分かりませんが、統計的には最低でも1日100PVはあるようなので、もうお気軽に感想でも、一日の愚痴でも、相談事でも何でも書いて下さい(笑)。

というわけで、久しぶりのヤフオクで購入したエストレヤのリアマスター一式。
1,500円くらいで、誰も入札が無く平和に落札。

エストレヤの利点はロッドの長さ。
Zとポジションが似ているので、こういう長さになるんでしょう。
いい感じでシオシオになっているけど気にしません。
無塗装のマスターシリンダーなんて、多かれ少なかれこんなもの。
ようは、漏れてこなければOK。

とりあえず、OHを兼ねて分解。
Z1Rはリテーナーだけど、エストレヤなど1/2サイズのマスターシリンダーはCリングというかスナップリングなので、分解するにはスナップリングプライヤーが要ります。
先端形状に種類があるけど、パーツによってはプライヤーの先端が曲がっていないと(もしくは真っ直ぐじゃないと)スナップリングにアクセスできない場合があるので、そこはよく確認を。

実際、持っていたスナップリングプライヤー、うまいこと穴に届かなくて外すのに四苦八苦。
何とかバラして内部を確認。
シールがダメになると、フルードのカスみたいなのがこびりつくのだが、そんな様子はなさそう。
見た目のシオシオさ加減とは裏腹に、モノ自体は大丈夫だったみたい。

早速、ロッドの加工に移る。
Z1R純正ロッドよりもやや長いだけではなく、調整用のネジ山が短いのでコレを足してやらないといけない。

ネジ山を足す…?
つくるってこと?

そう、ロッドの表面を切削して、あらたにネジ山を刻んでやるのです。
そこで必要になるのが、タップ・ダイスセット。
傷んだネジ山を修復したり、あらたにネジ山をつくるための工具。
DIY整備を楽しんでいる人たちでも、実際に使ったことのある人は少ないんじゃないだろうか?

自分もそのひとり。
どこかで調達してこないとイカン、と悩んでいたら…あるところには、あるものです。

MAC TOOL(マックツール)のタップ・ダイスセット!
超高級品(笑)。
どういうわけか、新品未使用品が我が家にやってきた…!

こっちが、タップ。
新しくネジ穴を切ったり、ちょっとナメてしまったネジ穴やナットを復活させるのに使う。
斜めにネジやボルトを回してネジ山を壊したりするでしょう?
あの時、これがあれば復活するというわけです。

こちらがダイス。
金属棒にネジ山を作り出す道具で、タップと対をなす存在。
今回使うのは、こちらのダイス。


ネジ山を切るには、部材をしっかりと固定、ダイスが斜めにならないよう注意して回してやります。
最低でも万力(バイス)は要るでしょう…我が家のは、本当に最低ランクのひとつですが(笑)。

力をかける作業の時は、大きいのに越したことは無い。
この万力は、手の平サイズなので、正直辛かったです。

そんなに巨大なヤツは要らないけど、できれば道具屋に行って、よさげなサイズを選んだ方がいい。
最初はロッドの根元付近を挟み込んだり、ロッドを横にして挟んでみたりしたけど、ダイスを回そうとテンションをかけると、ちっとも固定できない。
しょうがないので、凸のようになっているロッドの先端側を挟んで固定。

本来、上から下に切っていく山を下から上に…というのは、かなりイレギュラーなやり方。
しかし、バイスがうまいこと固定してくれないので、現状はこれが最適解。
ダイスで新規にネジ山を切る時は、どんどん回してネジ山を切ってはいけない。
3/4回転くらい回したら、1/4回転戻す。
これを繰り返してネジ山を作っていく。

不慣れなうえ、固定しているのがロッドの先端。
勢いよく回して、ポキっと折れたらシャレにならないので、1/4回転まで切ったら1/2回転戻して、を繰り返す。
手応えに少しでも異変を感じたら、すぐに確認。
潤滑油を使いながら、ゆっくりとネジ山を形成していく。

出来上がり。
ナットを通してみたが、途中で引っ掛かりはない。
さすがはMAC TOOL、一流工具を使うと下手くそでも、どうにか仕上がる。
よくMAC TOOLにせよSnap Onを素人が使っても、宝の持ち腐れという人もいるが、逆です。
素人だからこそ、質の良い工具を使い、つたない技術を工具に補ってもらうのが正解。
技術や経験を重ねていけば、ノーブランドの廉価品でもOKだったりするけど、基本は良い工具で。

次にロッドの長さを調整。
つまり、切り落とす作業。
写真を撮り忘れたけど、純正品と流用品を並べて、どこをカットするのか決める。
何度か比べてみて「ここだ!」という位置にマスキングテープで目印をつける。

本当はベビサンなんかで一気に切り落としたいのだけど、あいにく電動工具がないので、金属用のノコギリで少しずつカットしていく。

部材が鉄なので、そんなに頑張らなくても簡単に切れる。
ここもまた、はやる気持ちを抑えて、ゆっくりと作業してやる。
間違っても「もう折れるんじゃない?」と力をかけてはいけない。
曲がってしまったロッドを元に戻すのは、不可能に近いからだ。
こういう作業は、とにかく「急がば回れ」が基本です。

ちなみに、ネジ山を作った時、見よう見まねで焼き入れをしてみた。
トーチで熱したロッドを油で冷ましてやるといい、なんて教わったけど、本当はそんな簡単なものじゃないらしいけど…

切削部は、ネジ山が潰れて歪んでいることも多いので、ダメだったら再度ダイスを当ててやる。
ナットを回してみたが、スムーズに回ったので大丈夫でしょう。

では、いよいよ機体に取り付け。
ここも写真を撮影していないけど、マスターシリンダーの直径が小さくなった分、少しオフセットして取り付ける。
エストレヤのロッドはユニバーサルジョイントな構造になっているので、角度がついても動作するように設計されている。
とはいえ、真っ直ぐになっているに越したことは無い。

得意のホームセンターで部材を購入してみたが、10mmがなくて20mm。
しょうがないので10mmにカットして使用。
カラーが入手できない場合は、ワッシャーを何枚か重ねたらいいんじゃないかと。
元々ついていたボルトも、オフセットによって長さが足りなくなったので新調。
ステンレスのキャップボルトで固定しようと思ったけど、電蝕でサビることもあるため、ユニクロメッキのボルト(25mm)で固定。

見えづらいけど、スチール製のカラーを入れている

ここまで来たら、ほとんど作業は終了。
ブレーキホースをマスターシリンダーに取り付け(ボルトのサイズが変わるけど、従来のホースはそのまま使えるので、心配ない)、ロッドの先端をブレーキペダルに取り付ければ完成。
ロッドの径はZ1R純正品と同じなので、ペダルとの接続部はZ1Rから移植。
エストレヤのままでも良かったのだけど、ペダル側の接続部が若干広いので要加工案件。
だったら、Z1Rのモノを使えばいいでしょう、ということに。

若干、リザーバータンクのホースが長い気がするけど、とりあえず大丈夫でしょう。
気になる場合はハサミでカットしてやればいいでしょう。
リザーバータンクにブレーキフルードを入れ、エア抜きしたら完成。
エア抜きは、シリンジ(注射器)を使用すれば、時間とフルードの節約になります。

リザーバータンクにはカバーもついていて、しまって見える

しかし、制動装置なので、実際に走り出してみないことには完成とは言えない。
まずはセンタースタンドに立てた状態で、引きずりが無いか、手動で回したタイヤをカチっと停めることができるかを確認する。
この辺りでフニャフニャしているようだと、走り出したバイクを停めることなど出来ないので。

そしていよいよ公道で実走。
我が家は大通りまで出るためには、車が入ってこれない細い長い坂道を下らないといけないので、そこで停められないようなら、もはやアウトでしょう。
試しにペダルを踏んづけてやったら、見事にロック。
今までよりも効きが良くなったんじゃないだろうか?

海っぺりのテストコースを走行、特に問題ないので帰宅してみたら…

フューズボックスとリザーバータンクをマウントするパネルが割れている…!

えー?さっき海岸で見た時は何とも無かったハズなのに…?

何かマンガの描写のように割れている…
これではどうしようもないので、マウントを作らなければならない。
というわけで、お得意の100均ショップへ。
プラ製品で作ると劣化するんだろうか?
それともリジットマウントすることで振動が加わり、割れてしまうのだろうか?

写真右の「平面棚」が、これまで使用していたモノ。
これ、左側でレギュレーターを固定するのにも使っていて、加工もしやすいからよいと思っていたのだが…
写真左が、スチール製のブックエンド。
折れているところから切り飛ばせば、いまと同じ感じで使えるんじゃないかと予想。

こんなイメージで、どうでしょう?
まだ加工前。

折れたところを基準にして、金ノコでガンガン切ってやります。
加工しやすいのがスチールの良いところ。
カットしたら切り口を平滑にして、角は丸くしてやる。
本当なら焼付塗装してやりたかったけど…塗料が無いので次回にでも。

何度か機体に当てながら、穴を開ける位置を確認。
金属用ドリルも100均で売っていたので、それを使用。
ボルトよりも直径が小さいので、リーマーで加工してやる。

どういうわけか、キャップボルトが一本どこかへ紛失…ちゃんとトレイの上に載せてたハズなのに、ワッシャーとナットを残して行方不明に(^_^;)
リザーバータンクも、前よりも真っ直ぐになったから、良しとしましょ。

■2020年6月20日追記

そういえば、マスターシリンダーのキャップ(フタ)が脱落しないようにカバーがついていたので、それを装着するついでに、各部の点検。

少しネジ山が余分になってしまったところだけど、焼き入れしたおかげかサビは発生していない(いまのところは)。


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