激レアなペースですが、こんなワタクシにも質問してくれる方がいらっしゃって、無事に解決された方も、そうでない方もいらっしゃいます。
「そんなのバイク屋で聞けばいいのに」と思うのですが、プロショップに聞くと敷居が高いとか、仕事を依頼する前提じゃないと答えません、とか言われるのだろうか。
DMなどで問い合わせが多かった件について、いくつかピックアップします。
ややアップデートしている情報もあります。
何らかの参考にしてもらえたら幸いです。
MOSFET レギュレーターのコイル焼け問題
一世を風靡した(している)MOSFET型レギュレーター。
「レギュレーターって何?」
かなり大雑把に言うとバッテリーの充電器と思ってもらうと分かりやすいかも。
ガソリンを燃やして走るバイクでも、電気と無縁というわけにはいかない。
セルモーターを回し、ガソリン(混合気)にスパークプラグで着火させたり、コンピューターがインジェクションをコントロールしたり、ヘッドライトやウィンカーつけたり、ETC車載器を動かしたり、最近はスマホを充電するのは、すべて電気。
バッテリーからの電力供給がないとバイクは動かない。
そして、バッテリーも使えばプールされている電力が減っていく。
ガソリンは減ったらスタンドに行けばいいけど、バッテリーはどうするのか?
答えは単純、エンジンが回る力を利用して充電するわけです。
自転車のライトについているダイナモ(発電機)と同じ…といって分かってもらえるだろうか?
エンジンには磁石とコイルを利用した発電機がついていて、エンジンの力によって磁石が回ると、その傍にあるコイルによって電気が生み出されます(学校で習ったよね)。
この電気をバッテリーに注ぎます。
それを制御するのが「レギュレーター」という部品で、本当の名前は「レギュレーター・レクチファイア」といって昔はそれぞれ独立した部品だったけど、半導体の進化によって統合されて「レギュレーター」と呼ぶのが一般的である。
まずは、レクチファイアという部品。
エンジンの回転軸(クランクシャフト)に取り付けられた磁石とステーターコイルによって発生した電気は交流なので、そのままでは直流のバッテリーには充電できない。
なので、レクチファイアによって交流を直流に変換される。
「直流になったんだから、レクチファイアだけで充電すればいいじゃん」
と思うかもしれないが、エンジンの回転数が高くなると電圧も高くなり、バッテリーの充電許容量以上に電気が流れ続けると、バッテリーがぶっ壊れてしまう。
充電に失敗してバッテリーがパンパンに膨れ上がった画を見たことある人もいるでしょ?
というわけで充電するにしても、一定の量で流してやらないといけない。
回転数に応じて増減しがちな発電量を一定に保ってくれるのが「レギュレーター(英語でRegulateは規制する、制御する)」という装置。
従来は、ダイオードで直流に変えた電気をサイリスタという素子で一定の電圧にしてバッテリーを充電していた。
この種類のレギュレーターは「サイリスタ型」または「サイリスタ式」と呼ばれていて、古くから知られているのがこのタイプ。
一方のMOSFET型レギュレーター。
MOSFETとは「Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor」の頭文字を並べたもの。
MOSFETという素子をレクチファイアに、レギュレーターの部分に、ショットキーバリアダイオードを使用している。
サイリスタ式のレギュレーターよりも、損失が少ない(効率よく制御してくれる)レギュレーターだと思ってくれたらよい。
MOSFET型レギュレーターが脚光を浴びたのは2000年代はじめくらいに、旧車乗りたちが
「開放型バッテリーじゃなくてMF(メンテナンスフリー)バッテリーを載せたい」
と言い出したからだと思っている。
旧いクルマやバイクが使っている開放式バッテリーは、時々バッテリー液が減っていないか確認して、減っていればバッテリー液(電解液)を補充しなければならないし、補充電する時はバッテリーのケースについているフタ(栓)を外さないと、ケース内部にガスが充満して弾けるおそれもある。
これが、ちょっと面倒くさいけど、安価で流通している。
その後、登場した密閉式(シールド式)バッテリーは、MF(メンテナンス・フリー)バッテリーとも呼ばれ、バッテリー液を補充する必要が無い(というより基本的に補充不可)。
性能も安定しているのだが、開放式バッテリーのように急速充電には対応しておらず、補充電もラフにやってしまうと破裂しないまでも、ケースがパンパンに膨らむこともある。
バイクに使用する時も同様で、旧来のちょっとラフなレギュレーターのまま使用すると、あっという間に寿命を縮めることもあった。
そこで白羽の矢が立ったのが、MOFSET型レギュレーター。
損失が少なく、制御も優秀なのでMFバッテリーにも優しい設計だった。
そしてさらにリチウムイオン電池が市販化され、高度な充電制御が求められるようになると、MOSFET型レギュレーター以外に選択肢はなく、MOSFET型が普及した大きな要因というのは言い過ぎではないだろう。
良いことづくめの組み合わせだと思うのだが、MOSFETレギュレーターに入れ替えたマシンに「コイル焼け」なるトラブルが発生するという噂がチラホラ。
気になって調べてみたら、たしかに「体験談」として投稿している例がいくつかあった。
個人的には、サイリスタ式のレギュレーターレクチファイアは、余剰電力を熱変換しているが、MOSFET式のレギュレーターは、余った分をそっくりそのままステーターコイルに返してやるから、本体は冷えているが、コイルに負担をかけているのではないか、ということ。
でも、随分と使ってきたが、自分のZ1Rが「コイル焼け」を起こしたことは一度もない。
サーキット走行などの過酷なコンディションで使い続けたら変化があったかもしれないが、ストリートユースに限って言えば何の問題も無かった。
もともとステーターコイル自体に不具合…たとえばコイルの銅線をコーティングしている薄い皮膜が劣化して絶縁状態が不完全になったとか、銅線と配線を結合する箇所が接触不良を起こしているとか、何らかのダメージを負ったコイルであれば、リターンに耐えられない場合もあるのではないか。
気になったので、レギュレーター・レクチファイア製造販売の大手メーカーに問い合わせたところ、
「ステーターコイルへの負担は、サイリスタ型とMOSFET型も一緒で、違いは誤差の範囲内」
という回答が。
つまり、自分が想像していた「MOSFET型だからコイルへのリターンが大きい」という説は間違いということになる。
また、オープンタイプのレギュレーターというのもある。
MOSFETと同じような形だけど、ひとまわり大きい、という印象だ。
オープンタイプとMOSFETの違いについても質問したところ
「オープン式レギュレータは、レギュレート時に発電機のロスが少ないのが魅力ですが、100馬力(75kW)以上のエンジン出量に対して、発電機のロスは最大で0.5kW程度と誤差程度で有り、オートバイメーカーには発熱が少ないショート式レギュレータの方が魅力的な様です。
尚、昨今の古いオートバイのブームで、古いオートバイをレストアする際に発電機の発熱が少ないオープン式レギュレータの方が、発電機の寿命が延びるという事で、ショート式からオープン式レギュレータに変更するマニアのユーザーが多くいらっしゃる様です」(原文ママ)
という回答が。
なるほど、ちゃんと聞く方が良いですね。
ちなみにKawasaki純正部品だとH2がオープンタイプのレギュレーターを搭載しているようです。
メーカーにこだわらないなら、こちらもリーズナブル。
詳細については、以下のURLを参照ください。https://www.shindengen.co.jp/products/electro/motorcycle/reg/
イグニッションコイル バッ直
個人的には、少ない出費と少ない手間で効果ありなカスタムという認識。
ゼロから部品をそろえても2,000円でお釣りがくる。
必要なものは4極リレー、ギボシ。
以上。
長年バイクをいじっている人なら、工具箱やガラクタ入れの部品で出来ちゃうハズ。
「ヘッドライトのバッ直」を理解している人なら、なおのこと簡単だと思います。
「バッ直の何がいいの?」という方のために説明すると、空冷Zの場合(ほかの旧い車種なども)、バッテリーからヘッドライトやイグニッションコイルまで電気が辿り着くためには、メインキーやらハンドルスイッチやら、あちこちを経由している。
経年劣化したハーネスを通過している間にロスが生じ、ヘッドライトが暗くて車検も通らない…なんてのは有名な話。
「だったら、バッテリーから直接ひっぱってきたらいいじゃない」
というのがバッ直の思想。
ヘッドライトの場合、バッテリーとヘッドライト以外は介在しない。
でも、これだとエンジンを切っても、延々とヘッドライトはついたまま。
どこかにON/OFFスイッチを用意してあげないといけない。
かといって別にスイッチを用意するのも不格好だし、どこへつけるの?と悩むことになる。
従来のON/OFFスイッチを利用できないものか?
という悩みへの最適解が「4極リレー」である。
これを利用すれば、ハンドルスイッチがONになったのを感知して、ヘッドライト側を通電させることができる。
イグニッションコイルも同様で、バッテリーから直接電力を供給することで、バッテリーが本来持っている電力をロスなく送り込むことができる。
ちなみに、これにはひとつ注意点があって、リレーがぶっ壊れた瞬間、走らなくなります。
ヘッドライトのバッ直は、とりあえず自走は出来る。
タンクを降ろして、配線を組み替え、元の仕様に戻せるならいいけど。
自分では、正直あまり自信が無い(笑)。
では、どうするのがよいか。
アンペア数が同じリレーをスペアとして入れておいて、リレーが壊れたらそっちを使う。
リレー単品は消しゴムくらいサイズだし、カプラーで抜き差しできるので、車載工具とかバッグに忍ばせておけば安心。
この方が再スタートは早いし、リレーを交換しても動かない時は、別系統のトラブルを疑うこともできる。
空冷カワサキのスターターリレーはどれがいいの?
リレーつながりで。
スターターリレーのオススメを聞かれたことがあったので。
何度か交換したから言わせてもらうと、スターターリレーはそんなに壊れないと思います。
ウンともスンとも言わないなら別だけど「スターターリレーがちょっと調子悪い」てのは無いと思う。モーターとかバッテリーの不具合を再確認する方が先決。
それでも…というのであれば、替えるしかない。
で、何が良いのかというと、当時物の純正品を雰囲気を壊したくない、メインハーネスのレイアウトを変えたくない!というのであれば、ボディが丸いヤツね。
多分、付け替えても違和感ないでしょう。
個人的に気に入ったのは、四角いボディのスターターリレー。
四角いので収まりが良いのと、リレー自体にメイン系のフューズが搭載されているので、フューズボックスの場所がひとつ空く。
あと、実はリレーからバッ直的に電源が取れるようになっているので、ここからヘッドライトなどの電力を引っ張ってきても良いかも。
Kawasakiを問わず、高年式車両のスターターリレーは、どれもこんな感じ。
純正ホイールでチューブレスタイヤを履く
Z1RやMk2などのキャストホイールに、なぜチューブレスタイヤをチューブレスで履けないのか。
ホイールの仕様がそうだから、と言ってしまえばそれまでなんだけど。
何が違うのか?
タイヤがパンクしてホイールから外れると、ホイールの内側にタイヤがめり込んでくるんだけど、それを踏み止まらせるためのリブがついているのが「チューブレスタイヤを履けるホイール」で、そういう凸がないホイールはキャストホイールであろうともチューブを履いてね、ということになる。
で、Z1RやMk2の場合、オフ車のようにビードストッパーを後付けするようになっている。
ビードストッパーというのは、タイヤがホイールにめり込まないようにするためのもので、パンクやタイヤが外れるトラブルが日常茶飯事のオフロードバイクならお馴染みのパーツ。
でも、実際にビードストッパーをつけている人たち、どれくらいいるんだろう?
自分はつけたことも無いし、実際に見たことも無い。
41024-1001が純正ホイール用のビードストッパーだが、すでに廃盤になっている(社外品で、流用できるものはあるだろうけど)。
実際、ずっとチューブ+タイヤだけでどうにかなっていたし、フロントタイヤにはビードストッパーが入らない。
じゃあチューブだけでビードが落ちることを防ぐことができるのか?と聞かれたら、答えは限りなくNOでしょう。
空気が抜けたチューブは、何の助けにもならない。
チューブタイヤ用のホイールにビードストッパーをつけていないのであれば、ひとつもリスク回避になっていない。
というわけで「勝手にチューブレス」としたわけであります。
やり方は簡単で、バルブを全てチューブレス用に置き換えただけ。
ただし、チューブを頼らないということは、ホイールとタイヤの密着度が重要になってくるので、ホイール側に歪みや傷、汚れがないか入念にチェックする。
特にタイヤの端部が当たるところは、平滑ピカピカにしてやる。
2020年12月にチューブレス化して以降、早くも2年くらい経つけど、漏れなどのトラブルは一切なく、ダートの林道を何十キロも走破したので大丈夫でしょう。