2021年06月11日 Z1R エンジン不調 対策マニュアルまとめ | 空冷Zとの戦い Kawasaki Z1R ブログ

2021年06月11日 Z1R エンジン不調 対策マニュアルまとめ

Z1R-II

備忘録的に。
Z1R(そのほかの空冷Z)がエンジン不調、特にエンジンに火が入らない状況に陥った際、どのようにチェックするのか。
トラブルシューティングマニュアルとして載せておく。

燃料経路に異常はないか

案外忘れがちなのが、燃料コックのON/OFFやキルスイッチ。
「そんなバカな」というなかれ。
それで大騒ぎするケースは少なくない。

その辺、問題なければキャブのフロート室に燃料が入っているかどうかを確認。
レーシングキャブの場合、本体を着脱しなくてもメインジェットが交換できるようフロート室にボルトがついているので、それを緩めてみる。
ガソリンが漏れ出したら、フロート室にガソリンは行っている。
中堅DIYサンデーメカニックともなれば「そんなの当たり前」と思うかもしれないが、とにもかくにも燃料がキャブに供給されていなければ、いくらチェックしても意味がないので。

エアクリーナーを外してセルを回し、混合気がエンジン内部に吸い込まれるか確認。
正常であれば、ガスのような混合気が吸い込まれたり、吹き返してくる様子が見える(ライトで照らすと良く見える)。
少なくとも燃焼室に混合気は送り込まれていると判断できる。

フューズの確認

メイン系のフューズが飛んでしまうとスターターも回らないから、すぐに気づくはず。
入れ換えればOKではなく、ここが切れるということは致命的な原因が潜んでいる可能性がある(振動や他のことで切れたのでなければ)。
入れ換えで済ませることなく、あちこち要チェック。

バッテリーの電圧

モーターがそれなりに回っても点火しない場合、バッテリーの状態をチェックする。
見た目が12V以上でも、セルを回した時の電圧降下がひとケタになるようでは、バッテリーが正常とは言えない。

ほかのバイクまたは自動車(ハイブリッド車は不可能)から「ジャンプスタート」しても火が入らない場合は、別の原因を探らなければならない。

つなぐ車両がない場合は、バッテリーを充電してしばらく待つ、ジャンプスターターを買う、ネットで激安販売されているバッテリーを購入するとか、電力供給の手段を確保する。

配線の確認

走行中の振動でギボシが外れたり、ボディアースの端子が緩んで短絡(ショート)していた、というのはよく聞く話である。
絶縁テープで巻いた部分がほつれて金属部分と接触したり。
どこかのショップのブログで読んだのだが、ホーンの配線がショートしていてホーンスイッチを押すとエンジンが停まる、なんていう症状もあったそうだ。

無数、とは言わないまでも、それなりに沢山ある配線をひとつひとつ探るのは困難。
なので、エンジン点火に関係のないパーツ…先のホーンをはじめ、ヘッドライトをH4コネクターから引き抜いてみる、テールランプ配線を全て外す、左ハンドルスイッチのカプラをメインハーネスから抜く…

トライ&エラーを繰り返して、これで火が入れば対策する。
大丈夫と思っていた場所でも、ダメになることもあるので念入りに探そう。

キャブレターの確認

いろいろな偶然が重なった結果、昨日まで絶好調だったキャブレターが急激に不調をきたすことがある。
といっても急激と感じるのは人間だけで、我々が気づかないところで異常が始まっていることもある。

たとえば燃料経路の「詰まり」だ。
下水道のトラブルも同様、大きなものを詰まらせたのでなければ、毎日の油汚れが水道管内部に堆積して、やがて詰まる原因となる。
見えてないから「急に詰まった」と感じるだけなのだ。

給油の際、燃料タンクに落ちた小さな小さな埃が、ストレーナーの網目をかいくぐり、フロート室に送り込まれ、MJまたはPJに入った場合、それで燃料の経路を塞ぐ…ということもある。
以前も紹介したが、TM(RS)キャブのパイロットジェット(低速を受け持つ燃料経路)の穴は市販のキャブレター清掃用具では通過できない。

ギターの弦を通して清掃したつもりでも、キャブレタークリーナーにひと晩漬け込み、しっかり内側の汚れを落として掃除しないと効果はない。
目視確認は必要。

自分ではやらないくせに偉そうだが、しょっちゅう分解清掃しないのであれば、パイロットジェット、ニードルバルブ、パイロットスクリュー、スプリング、Oリングなどは5年くらいのスパンで交換してもいいような気がする。
4気筒でも2万円前後でリフレッシュできるなら、それほど大きな出費にならない。

スパークプラグの状態を確認する

スパークプラグまで電気が来ているか確認する。
手っ取り早いのはプラグを外し、エンジンの上など導通する部分にプラグを乗せてセルを回す。
そこでプラグがスパークしているか確認する。
またはスパークプラグテスターで確認する。

4気筒の場合、1番か2番が飛んでいれば、IGコイル自体に異常がない可能性は高い。
1番に火が飛ぶのに4番が飛ばない場合は、プラグを入れ換えてみる。
逆の現象が起きれば、プラグ自体が損傷している可能性がある。
症状が変わらない場合、プラグコードの損傷(怪しいのはプラグを抜き差しするキャップ)、IGコイルとの抵抗値を確認する。
プラグコードの1番と4番の抵抗値が10,400kΩ~15,600kΩだった場合(抵抗規格3ΩのIGコイルの場合。詳細はマニュアル、社外品の場合は製品取説を参照)は正常。
ここが「ゼロ」の場合、プラグコードの断線もしくはIGコイル本体の損傷が考えられる。

サービスマニュアルより。1次抵抗の値はプラグではなく、端子間の抵抗値。

しかし、仮にIGコイルがひとつ動かなくても、4気筒エンジンは2気筒でも動き出す。
IGコイルがふたつとも動かない、というのは想像しづらい状況ではある。
とはいえ、可能性がゼロというわけではないので、IGコイル本体からプラグコードを抜いてコイル単体での状況を確認する。
この時、正常な値だったらプラグコードが断線している可能性が高く、外したプラグコードをテスターにかけてみる。
抵抗値がゼロだったらIGコイル自体が異常。
ただし、抵抗値のチェックだけでは分からない部分もあるので、予備のIGコイルで動作確認するのが確実だといえる。

また、火が入っても、アイドリングが不安定でスロットルをひねっていないとストールする場合は、いくつかのプラグが点火していない。
大型の4気筒くらいになると1気筒が不調でも、やや安定することもある。
その場合、火傷に注意してエキパイを触るか、テスターで温度を測れるなら、排気温度でチェック。
火が入っていれば、一瞬触っただけでも火傷する(100℃以上)。
入っていない気筒は

火は入ったが、ほどなくしてエンストする場合

めでたく火が入ったものの、アイドリングがままならずストールする。
あるいは、少し走り出すと火が入らなくなり、やがてまったくエンジンがかからなくなる。
総合的な判断が必要だが、充電系統の不具合も視野に入れてチェックする。

ステーターコイルの発電をチェック

クルマもバイクも電気の源はステーターコイルである(ダイナモ、オルタネーター、とも言う)。
回転するエンジンの軸、この端に磁石がついており、軸と一緒に回転する。
回転する磁石の周囲または内側にコイルを置くと電気が発生(磁力、力、電力の関係)する。
発生したエネルギーはバッテリーに送られるため、スパークプラグやヘッドライトなどに消費されてもエンジンが動いている限り、バッテリーは満充電状態となる。

コイルに不具合が生じると、必要な電力が供給されないためバッテリーのエネルギーは消費に回る一方となり、ついには空っぽになる(ならないけど)。

ステーターコイルの動作を確認するのは、コイルに接続された3本の配線。
まずはエンジン静止状態で3本同士の抵抗値を計測する。
Zの場合、規定値は0.7Ω。

通常はステーターコイルの近くでギボシ結線しているが、レギュレーターまでダイレクトに繋いでいる

ここで針が動かなければ、コイル本体もしくは配線が断線している可能性が高い。
逆に抵抗値がゼロ(滅多にないだろうが)ということは、配線同士が短絡(ショート)してて、その頃には火災が発生しているかもしれない。

まだ、どうにか火が入る場合は、三本の線を仮にA、B、Cとするなら、AB、AC、BCでそれぞれ何ボルトのパワーを生み出しているか計測する。

4000回転まで回して、それぞれの組み合わせで交流50Vを計測したらOK。
ちなみに4000回転まで回すと相当うるさいので、一瞬吹かした時に50Vを確認できたら問題ない。

回転数に応じて、テスターの値もグングン上がっていくので、針の振れ方(デジタルでも)をよく見ておくとよい。
ここで規定の数値が出せていない=充電に必要なパワーがない、ということになる。
当然ながらバッテリーは弱る一方となる。

レギュレーターの確認

レギュレーターは整流器ともいい、ステーターコイルが発生した交流電気を直流にする。
また、ステーターコイルは回転数が上昇するほど発生する電力が強くなり、そのままの電力でバッテリーに返すと破損してしまう。
一定以上の電圧にならないようコントロールするのもレギュレーターの役割だ。

裏を返せば、壊れたレギュレーターはコントロールが効かなくなり、どんどん高いエネルギーをバッテリーに送り込もうとするか、あるいは、まったく電気を発生しなくなる。
よく「レギュレーターがパンクした」という状態だ。

レギュレーターのテストは簡単。
バッテリーに繋がるカプラーを外してエンジンをかける。
テスターを当てて15V前後の出力があるか、そしてどんなに回しても電圧がそれ以上強くなったりしないかをチェックする。
長い目で見れば「ヘタる」部品なので、どこかのタイミングで交換するのも悪くないだろう。
我が家のZは水冷Zの流用(FH010)だが、いまだったら(FH020)、YAMAHAのYZF-R1用のレギュレーターがあるので(1D7-81960-01)、これがお手軽かも。

これでも火が入らない場合

何か月、何年間も外で野ざらしにしていたのではなく、昨日まで普通にエンジンがかかっていたのに火が入らないのは、たいていは電装系。
IGコイルも買い替え、ステーターコイルとレギュレーターもバッテリーも新品にしても火が入らない場合は、ハンドルスイッチ、メインキーハーネス、メインハーネスごと入れ換えてもいい。
そんなに傷むものではないし、ボロボロでも案外使えるのだが、やはり経年劣化によるトラブルはゼロではない。