バイクの車載工具 選び方

メンテナンス

国内外で幾多のトラブル、ピンチを経てきた我が家のZ1R。
「こりゃあもう無理」というトラブルもあったけど、自走で帰れなかったことはなかった。 

工具やスペアパーツがあれば助かるトラブルもあるので、遠出する際は最小限の備えはしておきたい。

「最初からついてくる車載工具があればいいんじゃないの?」
という意見もあろうかと思う。
ドライバー、六角レンチ、サスセッティング用のレンチ、径の大きいレンチくらいだろうか?

無いよりはいいかもしれないが、はたしてこれでどんなトラブルを解決できるだろうか?
工具の代名詞、ドライバー。
多少なりとも自分で整備した経験があればお分かりだろうが、ドライバーが活躍する場面は少ない。
特にマイナスドライバーに至っては、車体にマイナスのネジがあまり使われていないので必然的に使用頻度も限られる。

ボルト&ナットを緩めたり締めるのであれば、バイクなら10mmを中心に8mmから14mmまでのソケットレンチ、スパナなどを一式、4mmから6mmの六角レンチ。
この辺があれば、ひと安心という意見には賛成してくれると思う。

が、大事なのは、何を想定して工具を選んだのか?ということ。
省スペースだけを考えたら何本もレンチやスパナを持っていくよりモンキー1、2本でいいはず。
でも、そうじゃない理由もある。
その辺をいろいろと解説していきたい。

工具を選んだだけでは、道半ば

基本的に車載工具は、ピンチから脱出するための最低限のアイテム、応急処置でとりあえず自走して帰る、もしくはバイク屋に避難するためのモノだ。
なので、フロントフォークがひん曲がった、とかセパハンがクリップから折れたとか、そういう状態での修理は不可能に近い。

例えば、スリップダウンでクラッチレバーが折れただけなら、スペアがあればホルダーに新しいレバーを入れてやれば自走可能だろう。
そのために必要な工具は何か…?というアプローチから入っていくのだが、ここで肝心なのが
「工具だけでは出来ない修理もある」
ということ。
クラッチレバーも折れた部品を工具で外すのは出来たとして、その先は?
ゴールが分解ではない。
新しいパーツを組み込んで機能させるのがゴールだ(何らかの方法で折れたレバーを修復する方法があるが、それはちょっと置いておく)。

北海道ツーリングでキャブ本体一式をスペアで持ち歩いた豪傑もいた。
極論、パリダカのように随伴するサポートカーがエンジンまで持ち歩くようなら、何があっても安心。
そういうわけにはいかないから、持参する工具とスペアは最大公約数的に選ぶことになる。

「じゃあ、結局何を入れたらいいの?」
という話になるので、次に具体例を挙げていこう。

車体やパーツが壊れた時、本当に必要な工具は?

イメージしやすいのが転倒によるレバーやペダルなど可動部品の破損。
ミラーも壊れやすいけど、走行自体にはさほど影響ないので省略。

この辺りには、ボルトのサイズに合ったレンチやスパナ+スペアでOKだろう。
最悪、スペアの持ち合わせがなくても、根元の残り具合ではドライバーやスパナを針金でグルグル巻きにして機能させることは可能。
なので工具だけではなく、針金やテープは入れておくとよい。
テープでオススメなのが、人間の応急所処置にも使える布製の「テーピングテープ」。
指や関節などのケガに使うヤツね。
テープ自体も強く、多少油脂がついてても粘着してくれる。
何重にも巻いてやれば強度も得られるほか、当たり前だがケガの治療にも使える。
絆創膏と一緒に入れておくとよいかも。

近場のツーリングでも壊れると厄介なのが、クラッチワイヤー。
長さが違うと、ほぼ使い物にならないので車種専用部品は必須。
けど、これは突然死するわけではなく、レバーの根元とワイヤーの先端(タイコ)の辺りが劣化し始めて、動きが渋くなったり、1本2本ほつれているとか、そういうのが見え始めたら寿命が近づいている、と考えた方がいい。
最近はステンレスワイヤーでサビに強い製品も出ているみたいだけど、グリーススプレーなどを注油してやると10年でも20年でもトラブルはない。
とはいえ、劣化以外でも切れることはあるだろうから、ワイヤーのスペア、交換用の工具を持っておくとよい。
Z1Rの場合、シフトリンケージからペダルを外す工具、クラッチカバーを外す工具が必要。
しばらく作業してないので忘れたけど、ワイヤーを通すのにカウルやらメーターパネルを外さないとアクセスできないかもしれない。
となれば、カウルを外すための六角レンチが必要になるので、束になっているレンチを入れている。

転倒時もれなくセットで壊れることが多いのがウィンカー。
が、ここは無視しても構わないと思っている。
ウィンカーが壊れただけなら走行には影響がないし、手信号で乗り切ってもいい。
どうしても気になるなら、バイク屋に飛び込んで応急処置的に別車種のウィンカーをつけてもらう。

あとはこれもありがちなのだが、気づかぬうちに締め付けていたボルトやネジが緩み、脱落してしまうなんてことも。
サイドカバーの脱落、ウィンカーなどの緩み、ナンバープレートの消失…など。
拾ったはいいけど、つけられない、となるとかさばるものも多いので。

意外にあると便利なのが予備のボルト&ナット類。
ボルトやネジごとパーツが脱落した場合、外装やパーツを見つけられても、ネジやボルトを発見するのは困難の極みだ。
予備のボルト類を入れる時はナットも一緒に。
あと、応急処置用としてバインダークリップをいくつか入れておくと、ちいさなパーツを固定するのに使える。

さっきまで大丈夫だったのに…に対処するには?

何だか走っているうちに調子が悪くなった、あるいは昼飯休憩を取ったら火が入らなくなった。
年式の新しいバイクでも、よくある事例。
信じられないかもしれないが意外に多いのがガス欠だけど、これは車載工具とは関係ない話なのでこれ以上書かない。
原因にもよるけど、キャブのスクリューを調整してやると調子が戻ることもある。
じゃあ、そこに必要な工具は何か?
L字型のドライバーが要るのか、長いドライバーがあると良いのか、逆にスタビドライバーの方がいいのか、とか。

あまり意識のないライダーたちは驚くかもしれないけど、タイヤの空気圧も永遠に規定値をキープしてくれるわけではない。
タイヤの空気圧は少しずつ減っていくし、体感できるレベルまで下がると「パンクした?」と真っ青になるのである。
さすがに空気入れは持ち歩けないから、エアゲージを入れておくだけでも安心感は違う。
本当にパンクしてしまったのであれば、パンク修理キットがあればどうにかなる。

「さっきまで走ってたのに系トラブル」の原因として多いのが、電装系のトラブル。
自分でも経験があるのだが、スターターボタンと連動しているセーフティ(たとえばクラッチを握らないと回路がつながらない、サイドスタンドスイッチなど)の接触不良で火が入らないこともある。
Z1Rはそれを調べるのにシートとタンクを外さなければならないが、驚くことにそこまでの状態にするまで工具は要らない。
タンクもゴムバンドで止まっているだけ。
でも、セカンド、サード機のDT、ZZRをZ1Rと同じ状態までもっていくにはDTなら10mm、ZZRなら8mmと10mmのソケットレンチがそれぞれ必要になる。

メシを食った後、再スタートしようと思ったら、ヘッドライトが点かない、ウィンカーが点かない…
そんな時はヒューズボックスをチェックするんだけど、ヒューズが抜けなかったらどうするの?
ヒューズボックスには予備のヒューズが刺さっていたとしても、ヒューズプライヤーが入ってなかったら?
ヒューズは無事なのにヘッドライトが点かないなら?球切れ?
ヘッドライトの球を外してチェックするには、どんな工具が必要?
もし、球が切れていなかったら、電気が来ているかどうかをどうやって調べる?

カンの良い方はお気づきだと思うが、さっき載せたテールカウル内部の写真。
小さなテスターが入っているでしょう?
ヘッドライトバルブが切れた場合、H4カプラまで電気が来てるのか、カプラよりも後ろ側に問題があるのか調べられる。

電装系と機関系、両方に可能性があるトラブルが如実に表れるのがスパークプラグ。
何故かプラグが異常にカブる、プラグに火が飛ばない…などなど。
以前、旅先からの帰り道、1気筒死んでるような気がした。
それでも、Zくらいの大排気量エンジンは、巡行できるほどのパワーがある。
家までもうすぐだったので、そのまま帰宅したが、プラグを抜いたら煤だらけだった。
いみじくも「朝までは何も問題なかったのに」と心の中で呟いたが、これが現実だ。

ほかのプラグを入れ替えて火を飛ばしてみたら、バチバチと力強い火が飛んでいる。
結局、ジェットニードルのホルダーが緩んで、ガソリンがドバドバ噴出したのが原因だった。
それ以来、外出先でもキャブを外してバラせるくらいの工具は入れている(大袈裟ではなく、フロートバルブを外すための細い棒があればOK。ハンマーはスパナなどで代用)。

この辺りのトラブルシューティングに必要なのは、スパークプラグを外すための工具。
万が一、プラグが黒焦げになって火が飛ばない場合、替えのスパークプラグがあれば凌げる。

ちょうどよいサイズのハコがないので、こういうものに入れている。

高さのあるソケットレンチはココに入れて、レザーマンの劣化コピーみたいな工具は300円だか500円でダイソーで買った万能ツール。
もちろん本物が欲しいけど何万円もするから、多分、こんなところに入れておけない(笑)。
ちなみに、黒いのは4極リレー。
バッ直点火しているので、リレーが死んだら交換する。

こちらはタッパーに入れたスパークプラグ。
「わざわざプラグを持ち歩くほど?」と笑われるかもしれないが、かさばるものではないし、チョイ乗りの範囲が数百kmなので。

ありきたりなものばかりで参考にならないかもしれないが、あえてバイスプライヤーを入れているのは「誰かにここを持っていてほしい」という場合、手の代わりになるほか、チェンジペダルが折れた場合、バイスプライヤーをシフトリンケージに噛まし、取っ手側にレンチやラチェットのエクステンションバーを針金で括り付ければ即席のチェンジペダルになる。
モンキー1本で済まさず、各種サイズのレンチを入れておくのはそういう場面での使用もあるし、ボルトやナットに力をかけるなら適正サイズの工具の方が確実。
それに、構造上せまいところに入らないこともある。
エクステンションバーの下にある黒いドライバーはネジを回すのではなく、スロットルワイヤーをキャブのリンクに着けたり外したりするために使う(笑)。
あと、カプラから端子を抜くのにも使えるスグレモノ。

昨年のロングツーリングに入れていった工具類。
多少、入れ替えたものもある。
厳密に言うと、車載工具ではなくロングツーリング向けのスペシャルな工具もある。
たとえば車体の奥底に突っ込んであるパンク修理キットとは別に、パンク修理剤を持っている。
うまいこと修理できない場合、最終手段として使うためのものだ。

そのほか

さっきも書いたようにボルトやナットがあると良い。
オススメなのが座面付きナット。
ナット側にレンチやスパナを使わずに締め込み出来ることがあるので、非常時には重宝する。

ちょっとばかり知識と工具が必要だが、端子付きの配線、端子があるとさらに安心。
電装系のどこかがイカれた場合、ジャンプしてやることで応急処置が出来ることもある。

ペンチ、プライヤー、ニッパーの類は100円ショップのモノでもいいけど、スキルに不安がある人ほど高額商品の方がよい。
というのも精度や耐久性がイマイチで、昔、オーストラリアのKマートで買った工具セットはボルトやネジがナメるのではなく、工具の方が先にやられたので(笑)。
良い工具ほど未熟な腕をカバーしてくれる。