2011年04月14日 東日本大震災の津波に飲まれたKawasaki Z1Rのエンジン

Z1R-II

今回は、ここにあげるべき話ではないのかもしれませんが、やはり書き残しておくべきことだと思います。
以下、ブログからの転載に加筆修正。

わが栄光のバンド、楽団四季のヴォーカル.JUNの実家は名取市の閖上(ゆりあげ)という場所にあります。
IMEでは絶対に変換してくれないマイナーな場所ですが、小さな漁港のある風情のある街です。
JUNの実家は、海から数キロ以上離れていて、我々からすると「海っぺり」ではないのですが、残念ながら津波の被害にあいました。
他の家より基礎部分が高くつくられているにも関わらず、1m以上は浸水。
外壁の一部には、大きな損傷があり、それは地震の揺れによるものではなく、津波が運んできた建材などが、ものすごい勢いで壁にヒットしたのだということが見て取れます。

かつて塩釜を拠点にしていたバンド、楽団四季。
ここから先は、当時の閖上地区の様子です(2011年4月11日撮影)。

家の周囲が田んぼなのですが、周囲には大きな漁船、車、そしてランドセルなどが流れ着いていました。
いまもなお、自衛隊の方々が大勢作業しており、敷地内では何名かの遺体が発見されたそうです。
ワタクシとJUNが居た時も、ある自衛官が「おおい!」と叫んで、するとわらわらと他の方々が集まってきて、シートのようなもので作業している姿を隠していました。
遺体の発見なのか、何なのか分かりませんが、ただがれきを片付けているのではない、という作業風景には、ただただ戦慄が走ります。

幸い、彼のご家族は無事だったのが唯一の救いかと。

で、実は彼の家には、ワタクシのZ1R2型のエンジンが保管されておりました。
これは、帰国して車体とエンジンを別送した時
「あのさー、オレんち車が入れないから、エンジンだけ置いといてちょーだい。そのうち取りに行くから」
「おっけー」
といいながら、10数年間、彼の家に放置していたという…

車も家も吹き飛ばされたのだから、木箱に入れていたとはいえ、エンジンなんて、どっかへいってしまっただろう、と思っていたのですが。
JUNより「エンジンあったよ。でも、多分、ダメになっちゃったんじゃない?」とメールが。
まあ、開けてみないと何ともいえないね、ということで、引き上げにいってまいりました。

まさにDiscovery。
とりあえず、こんな感じで「離れ」に鎮座しておりました。
数10センチしか移動していないのがスゴイ。
バールでこじ開けたら、ディズニーの毛布にくるまれ、水でぐっしょり濡れてたので「あーヤバイかも」と。

で、取り出したら、見た目はこんな感じ。
よいしょ、よいしょと運んで、ちょっと傾けたら、案の定。
水がいきおいよく流れてきました。
もう笑うしかありません。

本当は、家でゆっくり分解しようと思いましたが、ご存知の通り、Zのエンジンはオイルフィルターのドレインボルトが出っ張っているので、自立しないのですよね。

そして、車に積んだはいいけど、それっきり下ろせなくなるという状況が待っていそうなので、分割して運びやすくすることに。

ヘッドカバー、シリンダーヘッドを外していく。
実は、この機体はとてもコンディションが悪かった。何が原因だったのか分からないけど、最後はどうやってもエンジンがかからなかったという。
ヘッドもズタボロではなかったけど、カムホルダーが一本怪しいボルトで止まっていたのと、リコイルが突っ込んであるのも見つけました。
バルブを外していないので全容は不明だけど。

ピストンは、まあ想定内のカーボン量。オーバーサイズも入っていなかった。
気になるシリンダーの内側。意外にキレイ。
1か月近く塩水に浸かっていたとは思えないです。

ところが、このシリンダー、どうやっても外れない。
シリンダー両端のサービスホールにマイナスドライバーを突っ込んでも外れない。
やってはいけないプラハン叩きで、フィン欠けやらかしてます(笑)。
角材でクッションつくり、ガンガン叩いてもダメ。
イロイロがんばったけど、ダメだったので、そのまま家に持ち帰ることに。

アパートに持ち帰ってから、セガレと一緒に叩きまくっていたら、わずかに、ほんのわずかだけど若干の隙間が。
ドライバーとメガネレンチのサポートでこじったら、やっと開きました。
反対側はかなり苦労したけど。

でも、結局、持っている工具だけじゃ磁石もポイントも外れないという(涙)。
山形県の知人に泣きついて外してもらうことにしました。

後日、山形県に行きましたけど、全然何ともない。
街はいたって普通。
直線距離にしても、数十キロ…山をひとつ挟むと全然違うんですね…

とりあえず、ミッションとか重たいヤツは、クワガタハウスという名前の床下倉庫と勝手に決め込んだスペースに置いておけばいいかなと。
湿気が多いけど、オイリーにしておけばいいし。
あまり、物置のスペース使うと怒られるから。

ちなみに、この地震で我が家では、モーターサイクルの有用性が見直されました。ていうか、幹線道路のいくつかが寸断されているので、バイパスがやたらと混むのです。
家内は、数日間、ワタクシのZ1Rで通勤しておりましたが
「足つきが悪い」「重い」
と通勤用としては、あまり向いていないようです。

なので、Moto Garage Winds製作のDT125のタイヤを新調。
本当はFフォークとRサスがグダグダなのですが、コミューターとしては、まあよいのではないかと。

しかし、すごいですね、WINDSさん。
いまだに、店の中にラパンが突っ込んだまんまなのに、仕事をはじめてます。
ちまたでは、復興とか復旧とか言ってますけど、もろ被災者なのに、そういう凄惨さをスルーして仕事してます(笑)。

やれることを少しずつでも、やっていくしかないですね。
ホントに。

後日の様子です。
本当は、このマシンでオーストラリア一周をしようとしたのですが、RedfernのKawasakiへ持っていったら
「お・ま・え・は、クレイジー」
と言われました。キャブは調子悪いし、エンジンも白煙を吹いているし。

「悪いことは言わないから、単気筒600ccくらいのバイクで旅をしなさい。あんたくらいの体格なら、600でも乗りこなせるだろうし、何より、トラブった時に安いよ。修理も、整備も。
GPZ900R、Zep1100ならまだしも、なんで、こんな旧いマシンで旅をするのは自殺行為だ」
数ヵ月後「Zを買い直したから、タイヤを新調してくれ」と行った時には、口をあんぐりと開けてたけど(笑)。
「何で買い換えて、またコレなの?バカなの、キミ」と。

んで、先日、完全にばらせなかったエンジンを、山形県の知人宅でばらしてもらいました。
うちの工具では、バルブを締め上げられないのと、エアツールでクランク両端の諸々を外せなかったので。
エンジンの組み上げとか、本当の技術が必要なことは、一切、出来ませんから。
んでも、調子いいんだよなあ、バイクも車も。
やはり心の底で「いうこと聞かなかったら、燃やしちゃうから(by 魔女の宅急便」と念じているからでしょう。

水没したわりには、致命的なサビはなく。
CRCもどきで、一生懸命ブラッシングしてあげたら、だいぶ綺麗になりました。

なんか、この絵、まるでガレージを持っている人みたいでしょう。
もちろん、そんなことはなくて、もろもろの荷物を他に移しただけ。

メインは、あくまで「青空」です!!!
ちなみに、クランクを運んだりしている時、服を汚さないよう、無理な姿勢を取ったら…
脇腹を傷めました。
中の方なので、湿布とか、そういうのは効きそうにないです。
インナーマッスルをやっつけました。
夜中、何度も目を覚ますくらい、痛いです。

バカですね(涙)

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