登山ガイドに学ぶアウトドアの智慧 | 空冷Zとの戦い Kawasaki Z1R ブログ

登山ガイドに学ぶアウトドアの智慧

雑記帳

9月になっても暑い夏がどっしりと居座っていたが、10月も半ばを過ぎると、山々の木々は色づきはじめ、ようやく秋の出番がやってくる。

紅く染まった峠道を走り抜け、川面を眺めながらストーブで淹れたコーヒーを楽しむ。
バイク乗りにとっては絶好の季節。

だが、せっかく順番が巡ってきた秋も、東北ではあっという間に主役は冬に取って代わられる。
秋の残り香があるうちに走っておきたいのだが、鋭く尖った冷たい空気に刺されるとモチベーションも低下してしまう。

「もっと快適に乗れる方法はないのだろうか…」

ライディングウェアも日々進化しているものの、思った以上に冷気を防ぐことが出来ない時も…

バイク乗りたち同様、美しくも厳しい世界を自らの脚で登る登山愛好家は、どんな対策を練っているのだろう?

豊富な経験とノウハウを持つ登山ガイドに聞いてみた。

レザー&デニム

J.miura(以下J):バイク乗る人たちは、いろいろと服装へのこだわりがありそうですね。

Takeda(以下T):昔からストリートを走るライダーたちはスタイル重視かな。自分もバイクに乗り始めてからずっとOld School (オールドスクール)と呼ばれるレザーとデニムばかり着てる。

J:典型的なライダー像だね。

T:ただ、実際問題、この格好で快適に乗れる時期はそれほど長くない(笑)。
 夏場も走っている間はいいんだけど、炎天下の渋滞では地獄でしかない。
 冬の時期は革ジャンだと寒くて乗れない。今(10月)もこんな感じ。

J:結構、重ね着しているね。

T:確かにレザーは風を通さないんだけど、保温してくれるか、というとそうでもない。冷え込むような時は下に着るものを考えないと、たちまち身体が冷えてしまいますよ。 

J:ファッション重視でも耐えられるのは短時間かな。でも、高所を走るライダー、林道を走るようなスタイルのライダーは絶対に機能性は重視しなければならないと思います。
 自然の中に入れば、登山者と同じくもろに自然の厳しさを受けることもあるよね。

T:オフ車だとプロテクションを含めて考えないといけないしね。
 スキーやスノボのウェアのように、ファッションと機能がうまく融合しているといいんだけど。

J:確かに!リスクを知るオフ車のライダー、寒さを知るスキー&スノーボーダー、山を知る登山者は、機能性&ファッション性の調和がとれているかも。

T:あとは、雨装備かな…レインウエアを持たずにズブ濡れになったことが何回かある(笑)。

J:登山では、レインウエアは絶対に必携のアイテム。
 降水確率が0%で快晴の予報でも装備すべきもの。装備購入の際の優先順位ではNo1です。
 ツーリングでレインウエアを装備しないライダーなんているの?

T:収納性の問題もあるからね。常にケースをつけているバイクなら、いつでもレインウェアを積んでおけるけど、スペースがないバイクだとわざわざ持つことになるね。
 天気予報で行く先々が高気圧に覆われているような日だと、手ぶらで走るかな…
 ファッションと機能を両立させるいい方法ってあります?

J:自然の中で行う「登山」では、ウェアの選択や装備の有無が生死を分けます。
 だから何よりも機能性は重視しなければなりません。
 また、自然をよく理解している登山者は、機能性を重視したウェアを着ているから、普通にカッコよく見えるものです(笑) 。
 ライダーの皆さんが、革ジャンとデニムが必携ならば、その中に着るアンダーウェアや中間着を機能的なウェアにしてはいかがでしょうか?

T:具体的な製品とか、いくつか教えてもらえるとありがたいです。

J:そうですね~アンダーウェアなら保温力高い「ウール」素材のアンダーとかオススメですよ。

天候不良

T:登山もバイクも自然のなかで楽しむレジャースポーツなので、天候に左右されるでしょ?
 あきらかに雨が降り続ける場合は出掛けないけど、降水確率60%とか、曇りところにより雨、みたいな場合は一か八かで出掛けることもある。
 雨が降ってきたらレインウエアを着ることになるけど、登山の人たちは、雨に対してどんな備えをしているの?

J:さっきも話しましたが、レインウエアは最重要装備。
 登山では最終シェルターとも表現しています。できればゴアテックスなどの耐水圧の高いレインウエアを装備したいですね。でも、長時間の行動では、どんなに良いレインウエアを着ていても、様々な要因で濡れてくることがあります。
 だから私は、濡れた時の着替えを持つことも重視しています。
 例えば、アンダーウェア、ソックス、手袋など、濡れすい部位は日帰り登山でも携行しています。

T:なるほど、下着や靴下だけでも着替えがあると心強いかも。

J:それくらいなら小さくまとまりそうだしね。中間着は、暖かい空気を多く貯めることができる「インナーダウン」や「化学繊維のフリース」とかが良いかと思います。


J:ちなみに、登山では綿素材は使わないんですよね。濡れると乾きにくいので。
 アンダーウェアもコットンよりは化繊の方がいいと思います。

真冬のウェア

T:自分は冬の間は基本的にバイクは「冬眠」なんだけど、若いバイク乗りなんかは真冬でも乗り回している人たちが多い。
 寒い、寒いと言いながら元気に走っているんですよ。
 一緒に走ってみたらエラい大変だった(笑)…だから、冬場はとにかく着れるだけ着るようにしてます。

J:真冬は重ね着(レイヤリング)が暖かさを維持する為には重要ですよね。
 それは登山も同じですね。

T:裏地がついているデニムもあって、見た目がスッキリしているのもあるみたい。

J:デニムだけでは風を通すので、風雨を完全にシャットアウトするハードシェル(ゴアッテックスのような防水透湿素材使用の)を着なければ、上半身も下半身も暖は保てないと思います。

T:体を動かして自分から発熱することが出来ないしね。

J:ライダーの辛いところだよね。
 私も北海道とかDT50で走ったことあるけど、夏でも寒さを感じたもんね。
 ちなみに登山の上級者は、自分の歩行スピードに強弱をつけて体温調整をすることができます。

T:多少、モコモコになっても冬場はしょうがないかな。

J:革ジャンを着ると、中にいろいろと着ることができない?

T:革ジャン自体、ジャストサイズで選ぶのが普通だから、そんなに着込めないと思う。
 冬でもレザーだ!とこだわるライダーもいるだろうけど、自分は化繊のダウンにしてます。

J:暖かさをキープするコツとして、「首の付く部位を守る」というのがあります。
 つまり、首、手首、足首。
 ウェア同士の境になるのが「首」の付く部分なのです。そこを守ると冷気の侵入を防ぎ、中の暖かい空気「デッドエア」を守ることができます。
 だから、目出し帽、ネックウォーマー、手袋、ソックスなどは、「末端装備」と言ってこれまた重要視しています。手袋なんかは、防水力が抜群に良い「テムレスグローブ」なんかが良いですよ。
 登山でも必需品です。

T:なるほど、首の部分は確かに冷えやすいもんね。
 フルフェイスでも冬場は顔の周りがピリピリと寒くなります。
 ヘルメットって夏も冬も同じで、熱い時期のベンチレーション(換気)は気にするけど、寒い時に使うことは無視されている気がする。

J:そうなんだ、フルフェイスでも顔は寒いんだね。
 目出し帽をかぶってからフルフェイスを被るしかないんじゃないかな?
 薄手の製品もいいのがありますよ。

J:登山なら、夏は通気の良い帽子を被り、冬は保温性の高い帽子を被ります。
 ヘルメットにも夏用・冬用があると良いのにね(笑)。あとは、足元が寒いなら、レインパンツを積極的に履いたり、登山用のゲイターを装着して足首を守ります。

T:雪山登山のようなブーツは、あまり履かないんでしょ?

J:雪山登山をする場合は保温性の高い雪山用登山靴を履きますが、冬でも積雪の無い里山歩き程度なら春夏秋スリーシーズン用で十分ですね。

T:バイク乗りでもジャケット、パンツ、グローブまでは冬用装備はあるけど、靴はないかな。
 あまり言うと「そんなカッコで乗るな」と怒られるけど、夏場でもメッシュ素材で作ったスニーカーでバイクに乗ると、足先から冷えて来る。
 ゲイターもデザインがカッコいいのがあるから、いいかもしれませんね。

J:ライダー用のゲイター、カッコイイのを考えて商品化したら売れないかな(笑)

デイキャンプ

T:話は変わるけど『デイキャンプ』が流行っているけど、昔はこういう言葉なかったよね?

J:そうだね。テント持って寝泊りするからキャンプ、だからね。

T:こないだ、林道の脇を流れる川のそばで焚火をしてご飯つくって食べたんですよ。
 大自然のど真ん中だから、当然ながら直火はNG。焚火台を使って。

J:基本のき、ですね。

T:後始末もね、ゴミの持ち帰りは当然だけど、薪を燃やしたカス、炭火の残り、これを持ち帰らないというか、自然に還るだろうという感覚で埋めていくのが問題視されている。でも、広瀬川の芋煮会なんかは、河原の石を積み上げてカマドをつくり、直火でガンガンやっている。

J:基本的なマナーとして、焚き火は「禁止」の場所ではしてはいけないでしょうね。近年、どっかの里山で登山者が山火事を起こした事件がありましたよね。
 タバコの火も、焚き火もだけど、まずはマナーを絶対に守る。
 で、やって良い場所なら、細心の注意を払って火を管理することが重要かと思います。
 最近は「焚き火台」も商品がいっぱい出ているから、装備して頂きたいものですね。炭火の残り、タバコの吸い殻とかも、昭和の時代は埋めればOKみたいなこともあったけど、今は持ち帰って処分するのがマナーですよね。

T:この頃、キャンプやアウトドアがブームになって、どこも人が増えてきているから、少し慣れた人間だと「人の少ない方へ行ってみよう」という発想になりやすい。オートキャンプ場など設備が整っているところは水も飲めるし、食器を洗うことも出来る。
 ゴミ集積所もあるから、ゴミを気軽に捨てられるのが当たり前になっている。その感覚のまま「大自然の中でデイキャンプ」をやると、水はないし、洗うことも出来ない。

J:自然において「水」の有無は本当に重要ですね。行動そのものに影響しますから。「水場」が無いなら持ち上げるしかないし(負担増)、「水場」が有れば軽量化が出来、さらに前に進めます!

T:水なんかはペットボトルで持ち込めるけど、処分する大変さって後から気づくんだよね。気づかないと燃やすとか埋める、最悪は放置という流れになりそう。山とか、ゴミ落ちてないんですか?

J:山のゴミはすご~く減りましたよ。これは登山の大先輩方から聞いた話なんだけど、昭和の登山ブームの頃はゴミがかなり多かったみたい。
 それに比べたら、今の登山道は本当にキレイになったんだって。たまに不注意で落とすゴミとかは見つけるけど、意図的に捨てるというのはほとんど見なくなりました。

T:昔はタバコも土に埋めればそれでいい、みたいな感覚だったもんね。

J:あと、登山のゴミは完全持ち帰りだから、登山者はゴミを出さないような工夫をしています。
 例えば、食品とかの袋ゴミを出さないように、家でビニール袋はむいていく。
 コッヘルでカレーライスを食べ終わったら、そこにお湯を注ぎスープやみそ汁にして、ご飯やカレーのカスをとりながら洗うように食べる。
 食べ終わったら準備していたウェットティッシュ1枚でさっとふいて、家に帰ってからしっかり洗う。また、生ごみは絶対に出したくないので、食材は切ってジップロックとかに入れていくか、ドライ系の野菜を使用する。登山では「持ち帰りの原則」が徹底されていると思います。

T:デイキャンプだとアウトドアで料理する!ということばかりが先行しちゃうからね。
 登山の人たちのように、現地ではシンプルに食べられるように工夫する方がスマートでカッコいいかもしれないね。

若き日のJ.miura氏。反町隆史に似ていると言われていた時期(笑)。キツネには触っていません。
1999年、大雨の北海道。この時に使っていたダンロップのテントは2021年の男鹿半島でも活躍した

トイレ問題

T:我々は男性だし、この歳にもなれば(ならなくても?)、恥じらいも無いから、迷惑にならない、自然を壊さない限り、気にしないで用を足せる。
 けど、女性ライダーはそうはいかないよね。もともとアウトドアの経験が豊富ならいいけど、かなり抵抗あるはず。だけど、生理現象だし「我慢」を選択肢に入れるのは、もってのほかだし…
 登山の人たちはどうしてるの?

J:山でのトイレは重要な問題です。
 岩手県の早池峰山では、簡易トイレ設置用のトイレブースがあって、登山者は簡易トイレを携行していかないと用は足せない。貴重な高山植物を守るために、アチコチで用を足さないように呼びかけています。
 でも、実際はトイレブースなど無い山の方が多くてね。
 登山では隠語で「お花摘み」「キジ打ち」「セミ打ち」などと言って用を足すんだけれど、一応マナーとしては、沢から離れてすること、穴を掘って分解しやすいように枯葉などをのせてしっかり埋めることなど気を遣ってきました。
 最近は、携帯トイレを携行して、持ち帰るようになんてことも呼びかけられています。

T:携帯トイレの存在は知っていたけど、山の中でどうやって使うの?みんなの前で使うわけにいかないでしょ?

J:女性の場合、身を隠せるように、折り畳み傘、簡易テント(ツェルト)、ポンチョなどを携行して用を足すんです。
 トイレが心配で山に行くのを躊躇する人もいたので、一緒に行く仲間の配慮も大切かな。
 入山前の最終トイレ、山での「お花摘み」はガイド中もかなり気を遣いますよ。
 トイレの心配が無ければ安心してアウトドアを楽しめますよね。

T:さっきのゴミ問題にも通じる話ですよね。
 あらかじめツーリング計画に織り込み済みなのか、どうか。
 いま、トイレに行きたいかどうかも大事だけど、この先、数時間は何処もトイレが使えないですよ、というのをちゃんと伝えておけば「じゃあ、今のうち済ませておこう」となるかもしれない。

J:女性は自分で言い出すのが恥ずかしい人もいるから、引っ張っていく人が、率先して聞いてあげるべきでしょうね。

ケガなどのトラブルには…?

T:ラッキーなことに、まだバイクでは救急搬送されたことがないけど、ケガをしたらバイクはアウト。でも、デイキャンプするような山奥だったり、林道を走っているライダーだと電話が繋がらないこともある。
 こないだ、白神山地の奥深くを走ってきたんだけど、数えるくらいしかクルマは通らないし、転ばないにしても、ここでバイクが故障したらどうするんだろう、とか怖くなった。
 たとえば、大怪我しなくても、左手でクラッチが握れなくなったら走れなくなるし、左足を動かせなくなったら、ギアチェンジも出来なくなる。
 昔、海外をツーリング中、右足をケガした時は、本当に大変で3日くらい動けなかったんですよ。
 深い山の中でそんなトラブルになったら、どうするの?

J:服装の時にも話した通り、登山者は「万一に備える」という意識が非常に高いです。
 セルフレスキューという言葉もあって、非常食、非常水、ヘッドライト、サバイバルシート、簡易テント(ツェルト)…万一、何かアクシデントが起こって、山中で停滞せざるを得ない状況になっても対応できる準備をして山に入ります。
 ビバーク術(不時露営)って言ったりしますね。

J:林道を走るライダーであれば、大自然のど真ん中で万一のアクシデントで停滞せざるを得ない状況になるよね。
 登山の歩きとは機動力が全く違うから、マシン無しでは歩いて帰れないでしょう。
 非常用の装備を含め「ビバーク術」などのスキルも、登山者並みにこだわった方が良いかと思いますね。

T:なるほど、大事かも…

J:あと、登山者は万一に備えて「登山届」というのを、警察などに提出するようにしています。行程や携行品、連絡先などを細かく記入しておくものです。
 これは、林道系のライダーの安全対策にもオススメですね。
 あと、スマホの登山用アプリ(GPS)で「ヤマップ」なども、林道系ライダーに役に立つのではないでしょうか?

まとめ

J.miura氏とは、もはや30年来の付き合い。
昔からアウトドアの道具には精通しており、かつてオーストラリアツーリングに行く時にも、いろいろなアドバイスをもらった。
アマチュア時代を含めれば、この道30年の大ベテランだ。
昔と比べたら、道具も格段に進化しているうえ、リーズナブルな製品も数多く出回っている。
しかし、スペック通りの能力を発揮してくれなかったり、性能を引き出せない、なんてことも。
そんなとき、頼りになるのは実体験をもとにデータを蓄積しているエキスパートの智慧。
数々の智慧が詰まったJ.miura氏のサイト、ぜひ覗いてみて下さい。

宮城の登山ガイドJ.miuraの登山道
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登山愛好家へのセミナーを定期的に開催するJ.miura氏


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