2021年04月28日 Z1Rのヘッドカバーガスケット交換

Z1R-II

新型コロナウィルスの脅威から1年。
ワクチン接種が始まったとはいえ、接種率は2%にも満たない日本では、実際は何も変わっていない。
ステイホームが若干緩くなった程度。

関東では緊急事態宣言が発令されたし、宮城県もマンボウだし。
ゴールデンウイークは引き籠るしかないんだろね。
天気も良くないみたいなので、必然的にステイホームになりそう。

外に出られないなら、以前から気になっていたヘッドカバーからのオイル漏れを何とかしようてなわけで、作業開始。

黒い塗面なので分かりづらいが、光を当ててやるとあちこちオイルが滲んでいるのが分かる。
ただ、このくらいだと拭き取れば何とかなるレベル。
ガッツのあるオーナーたちは「こんなもの漏れのうちに入らない」と笑い飛ばすだろうし、インチキ臭いバイク屋なら「旧車はどうしようもない」とか言い出しそう(笑)。
いずれにせよポジティブなことではないので、処置しておくことに。

個人的には、化学合成油だと粒子が小さいせいか漏れも大きくなるイメージ。
冴速を入れてた頃は、滲み以上の漏れだった。

いま入れているのは、ケチった挙句のS4(部分合成油)なのだが、こちらに換えてからは漏れが止まり、滲みの状態。
もしかしたら、鉱物油が含まれているS4の方が油脂の粒子が大きくてリークしづらいのではないか、と考えているが、その辺りはどうなのだろう?

作業開始。
まずはヘッドカバーからナットを抜いてやる。
真ん中の数本が、手で回るほど緩んでいて冷や汗が出た。
トルクがかかったネジ山が限界にきて破断したのではないか、と心臓が飛び出そうになる。
幸い、ボルトもネジ山も無事。
単純な「ゆるみ」だったのだろう。

外す時も油断せず、静かにレンチを回してやろう。
ラッキーなことに、どれもスムーズに抜けてきた。

抜いたボルトは同じところに使いたいので、分かるようにしておく。
「あんまり意味ない」と思われるかもしれないが、何せ相手は旧いバイク。
シリンダーヘッドのネジ山がグズグズになるのは、よくあること。
どのボルト穴がおかしかったのか、すぐに分かるようにしておきたい。
あとは、これもそこまで気にするべきなのか分からないが「あたり」がなるべくあっていた方がいいでしょ?
僅かな違いかもしれないが、ネジ山とボルトにも相性があって、いままで対になっていたものを戻した方がスムーズではないか、と…
もちろん、新品ボルトに換えた場合はこの限りではない(ただ、使う前にネジ山を整えたいけど)。

取れないなと思ったら、真ん中のボルトを外していなかった(笑)
度重なるヘリサートにより、カムホルダーのボルトがこんな感じ…

すべてのボルトを抜いたらヘッドカバーを外すのだが、心配だったガスケットの「貼りつき」もなく簡単に外れた。
ガスケットの表面がこびりつくのは経年劣化というよりも、液体ガスケットを塗りまくっているからだと予想している。
オイル漏れに悩むと、あちこち液体ガスケットを塗りまくるのは理解できるけど『過ぎたるは猶及ばざるが如し』という言葉にもあるように、やりゃあいいってものじゃない。
こうなったら最後、当り面に傷をつけないように、丁寧に作業しなければならない。

念のため、ピストンは上死点にあわせてから作業しましょう。
シックネスゲージ持っている人は、せっかくなのでタペット調整を。
うちにもあったハズなのだが、紛失してしまったし、手持ちにタペットがないのでスルー(笑)。
 
そういえば、蓋を開けたら、2年前に入れたエンジンオイル「冴速」が、カムチェーンガイドスプロケトを止めるキャップボルトの凹に溜まっていた。
蛍光グリーンだから気づいたんだけど(笑)。
エンジンオイルって、ちょっとの隙間からでも漏れるくせに、こういうところに残るんだね。
そう考えると「エンジンの隅々まで行き渡り、あなたの愛車を守ります」的なケミカルも怪しく思えてくる。
 
ガスケットを撤去したら、半月形のカムプラグを外す。
この時、外れないからと道具で無理矢理こじると、勢い余って他のパーツを傷つけるので要注意。
力を入れる方向で簡単に外れるので、焦らずに外してやる。

液体ガスケットを塗った箇所は貼りついていたので、カッターで剥離

当り面があらわになったら、ひたすら清掃+脱脂。
金属ガスケットだったら、脱脂+拭き掃除で終わりなのだが、紙ガスケットは必ずどこかに残る。
いや、残らないこともあるけど、残る前提で作業した方がよい。

まずはヘッドカバーから。
幸い、ほぼガスケットの残りカスはついていなかった。
目の細かい耐水ペーパーにオイルをつけて、ちょっと黒ずんでいるところを「拭く」感じで終わり。
これが、しつこい汚れだったら、オイルストーンとか耐水ペーパーを平面の木材につけて研磨する。
スクレーパーやカッターで剥こうとすると、刃が面に入るので厳禁。
大きくベリベリ剥がす時のきっかけに使うのはよいけど。
んなバカな、と思うかもしれないけど、アルミは柔らかいので斬鉄剣のようにスっと入る。

注意したいのはヘッド側。
ゴミやカスがバルブ側に落とすのは避けたいので、作業は丁寧に。
エアダスターはあった方がいいかも。

清掃&脱脂をしつこくやったら、カムプラグを入れる。
使用したのは純正品でも最近リリースされた対策品。
何を対策したのかというと、ヘッドカバーを乗せて締め込んだ時に「ニュル」と落ちてこないような形状に換えたのだ。
単なる「半月」ではないのが分かるハズ。
写真ちゃんと取らなくて申し訳ないが、ヘッドと当たる面も溝が切られている。

一報、純正か社外品か忘れたが、こちらが使い古し。
犬の毛がついていて、重ね重ね申し訳ない。
ご覧の通り、単なる半月、半円形でしかない。

ちなみに、カムプラグの半円面、ここに液体ガスケットを塗るかどうかで意見が分かれる。
たいていのバイク屋では「塗らない」ようだが「塗る」というプライベーターたちも。
塗るのはガスケット本体と座面が当たるところだけでよいそうな。

今回、使った液体ガスケットはキタコのコンビニパーツ。
オマケみたいに小さいけど、素人はこれだけあれば十分。
通常サイズ(2000円くらいするヤツ)を購入しても、おそらく使い切らないでしょう。
ワタクシもいつも半分くらいで硬化させて無駄にしているので、このサイズはありがたい。

塗り終わったら、いよいよガスケットを載せてやる。
今回、使用するのはPAMSのヘッドカバーガスケット。


パッケージもイカしている

カーボングラファイト(分かりやすく言えば鉛筆の芯)で造られている。
色味は確かに鉛筆の芯。
素材が柔らかく、ヘッド面の小さな凹凸にもしっかり食い込むのでオイル漏れを軽減できる。
そのうえ、硬化しないらしいので、分解時の清掃が楽になる。
また、素材的に熱伝導性が高いのでヘッドカバーのゆがみ防止にも一役買っている。
いいとこづくめなのに、値段が安い。

ちなみに純正品11060-1581は5280円。
半額近い価格で買えるのは、ありがたい。

これをヘッドに載せるわけだが、結構フニャフニャして頼りない。
紙系のガスケットのような芯っぽさが無いというか…間違って折ったりしないだろうか。
へっぴり腰でガスケットをヘッドに載せてやる。
自重でペタンと下がる様子もなく、結構パカパカ浮いてくる。
ヘッドカバーを戻してやれば大丈夫なのだけど、ズレがないよう確認作業は大事。

間違いなくガスケットが定位置に収まったら、いよいよここからが勝負。
正直、この辺までは外して載せるだけなので、ぜんぜん余裕。
誰でも出来ると言えば出来る。

問題なのは、ヘッドカバーを止めるボルト。
組み込む際、ボルトでヘッドのネジ山を潰さないか、これがイチバン怖い。
何せカムホルダーのボルト穴は、ヘリサートが何か所も入っている。
これと同じようにネジ山が潰れないとは限らない。

16本のボルトを止めるだけなのだが、細心の注意を払う。
ネジ穴を清掃の後、ボルト一本一本のネジ山をチェック。

ヘッドカバーガスケットのズレを直しながら、ボルトを元通りの場所に戻す。
ボルトを入れる時はオイルを塗布するよう指示がある箇所もあるけど、ヘッドカバーくらいの低トルクだとどうなんだろう?
完全乾燥状態でのトルク値なのか、オイルを塗ったうえでの値なのか。
マニュアル読んでもその辺は書いていないので、迷った挙句、乾燥状態で締めることに。
オイルを塗布すると抵抗が少ない分、オーバートルクの末のボルト&ネジ山破壊を誘発する可能性があるらしいので。

トルク値の±もマニュアル的には結構幅があるんだけど、バイク屋からは「低い方でOK」と教わってます。
ユルユルじゃないの?
そんなんで漏れてこないの?
と思うけど、規定値に収まっていれば大丈夫。
複数のボルトで止めているパーツは、トルクの値よりも均一のトルクで締めることが大事。
それに旧い部品は規定トルクも
それで漏れるようなら、もう少し強めのトルクで増し締めしてやればいいわけで。

ちなみに、ヘッドカバーボルトの締め込みに順番はあるんだろうか。
シリンダーヘッド自体は真ん中から外へ外へと行くようだけど。
これもマニュアルをみても図が載っていないので、似たような感じで内側から外側を締めてやる。

今はトルクレンチも安くなって、自分でクルマのタイヤ交換する友人もトルクレンチで締めてるけど、昔は使い方を知らない人も沢山いた。
「カッチン」と音がしてるのに、ラチェットみたいにガチガチ鳴らしたり。
これやるとトルクレンチがぶっ壊れるのよね。
最初のうちはラチェットと同じようにガチガチ締めていっていいんだけど、手応えを感じたら少しスピードを緩め「行き止まり?」くらいになったらゆっくりと締め付ける。
すると、レンチが「カチ」となるので、そしたらテンションかけるのをやめましょう。
クルマのタイヤくらいゴツいところだったらまだしも、シリンダーヘッドのボルトは細くて折れやすいんで。

あと、高額だったトルクレンチもピンキリあって、ピンの方は何万円もするけど、キリの方は数千円。
我が家のトルクレンチもキリの方なんだけど、アストロプロダクツで購入したもの。

多分、コスパは悪くないと思うけど、一生モノを探すならKTCくらいのヤツが良いと思います

怖いのが、トルク値を決めて回してるのに「カチ」がない不良品&粗悪品。
同じ製品でも個体差があるのか、使い方が悪かったのか「ボルトを切った」というレビューも。
シリンダーヘッドでそんなことになったらシャレにならないので、こういう系統の工具は必ずテストする。
万が一、壊れていたらお店で交換してもらえばいいだけなので。
特にトルクの値が低いバイクや自転車のボルトを締める時は、事前にテストした方が無難。

ワタクシの場合は、こんな感じでテスト。
このサイズだとMAXトルクが25Nmなので2.5kg~2.6kmの間。
うちのクルマのホイールナットは103Nmなので10kgちょいで、こん棒みたいなトルクレンチで回します。
バイクのエンジン内部などデリケートな部品の締め付けには、小さなトルクレンチが必要なのでMINトルクが5Nmくらいのヤツを買えばいいんじゃないかと。

最弱に合わせても「カチ」または「コツン」という手応えと音が無ければ、トルク値のセッティングが悪いか、製品不良なので気をつけましょう。

とりあえず、無事に組み上がった。
あとはエンジンに火を入れるなり、実走してチェック。
頼むから漏れてくれるなよ~

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